詠むということ
詠むって感情の表現ではないな。むしろ経験の解釈だ。代わり映えのしない風景とか日常の一コマに、ある積極的な態度をとる。そこに見いだした姿を、三十一文字にまとめる。いや、浮かび上がって訴えてくる声を三十一文字にする。そんなの無理かな。日常におけるひっかかりが短歌の種ではあるのだろう。それでもその種自体を対象として詠むのはつまらない気がしてきた。特別なこと、変わったことではなく、変哲のないことを新鮮に感じる心を立ち上げる運動が短歌を詠むことの芯ではないか。中身のない思弁だけどそんな事を考えて次の一首を詠みたい。