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天文関連エッセイ・伝記本
天文学者が書いた天文書などは良くネットでも取り上げられている。最近では、宇宙やばい、なんてネットミームもあって、ネタ的に天文学が扱われたりもしている(そのものずばりなYoutuberチャンネルもある)。
専門的な知識は、天文学関連の書籍や、今では科学者が運営する動画チャンネルなどでも学べるようになった。ただ、あまり高度になると、付け焼刃な知識ではとてもついていけなくなったりもする。最新の宇宙論とか、適当な概要ですら理解が難しい。
そういう、堅苦しいものではなく、宇宙とか星とかが好き、という天文ファンとかそう言う人たちの話だとか、学者のエッセイとかだと、あまり難しいこともなく、日常生活も交えて、気楽に読めたりする。
そんなエッセイなどをこれまで読んできた中から、幾つか紹介しようと思う。
『ぷらべん 88歳の星空案内人 河原郁夫』冨岡一成:著
ぷらべん、というのは、プラネタリウム弁士、の意味らしい。弁士、というのは、映画がまだ映像だけの無声映画の時代、セリフや状況を弁士という人が声にだして説明していた。この本ではプラネタリウムの解説員のことを、プラネタリウム弁士、という風に表現している。
河原郁夫(1930年12月20日~2021年3月21日)は、子供の頃にプラネタリウムを見たことで、後に五島プラネタリウムの創設に関わったり、長くプラネタリウム解説員などを務めたりして、プラネタリウム解説者の育成などにも携わってきた人。この本は、子供の頃のことから書かれた、天文に関わった人の一代記。
『プラネタリウム男』大平貴之:著
プラネタリウム繋がりでもう一冊。個人製作でレンズ式プラネタリウムを作製した、大平貴之という人の、プラネタリウムをめぐる半生記。
たしか、『スカイウオッチャー』(星ナビの前身)という雑誌に載っていた記事でこの人のことを知ったのが初めてだったか。表参道でやっていたイベントには私も行ったことがある。たしか、大平貴之氏本人も入口で挨拶していた。
趣味から始めたことから、会社を起業したりなどの、ビジネス書的な読み方もできる本でもある。
『星のことば』小尾信彌:著
天文学者があまり堅苦しくない口調で語る天文にまつわる話。新聞連載されていたものなどが纏められている。著者の小尾信彌(1925年3月17日~2014年9月28日)は、東京大学理学部天文学科を卒業して東京天文台の技官になり、その後は東京大学で教授ともなった、天文学者。
私は、他にも著作を幾つか読んだことがある。天文関係の科学解説書を多く著した人だ。
この本は、1974年初版と、少々古い本だが、まだ出版されていた。学者の、科学に対する表向きな話ばかりではなく、ちょっと、本音のようなものも書かれていて私は興味深く読んだ。
『天文台日記』石田五郎:著
岡山県の天体観測所での、1月から12月まで、日記風にかかれた本。著者は石田五郎(1924年2月21日~1992年7月27日)。上にあげた小尾信彌の一つ年上だが、東京大学理学部天文学科を卒業したのは1948年と、2年後の様だ。
これは文庫版になるが、2004年初版。単行本は、1972年刊行とこちらも少々古い内容ではあるが、文庫化したことで、割合知られている本になっている。私は、『星の歳時記』『天文屋渡世』という本も持っていたはずだが、実家に置いていたので、今は手元にない。
星について、一年間語ったものとして、野尻抱影の『星三百六十五夜』があるが、野尻抱影を天文屋として、石田五郎は、自分を天文屋二世と称していたそうだ。
アマチュア天文家の本も紹介。
『白河天体観測所: 日本中に星の美しさを伝えた、藤井旭と星仲間たちの天文台』藤井旭:著
アマチュア天文家で、写真家の藤井旭(1941年1月12日~2022年12月28日)による、白河天体観測所開設から閉鎖までの顛末をまとめた本。藤井旭の愛犬チロは、この観測所のマスコット的な存在で、『星になったチロ』として本にもなっている。
私が星座を知るために手にした、草下英明の『星座手帳』の写真は藤井旭によるものだった。
多くの天文関連書籍、とくに初心者向けの星座や天文関連本を書いてもいるので、本屋や図書館で目にすることも多いだろう。
『星の来る夜』 L.C.ペルチャー:著 鈴木圭子:訳
こちらは、アメリカのアマチュア天文家、L.C.ペルチャー(1900年1月2日~1980年5月10日)の自伝。表紙の絵は、1910年に接近したハレー彗星を見ているペルチャーの家族であるらしい。どことなく、アメリカの田舎というと、『大草原の小さな家』的な雰囲気を感じる。高校を中退した人だが、その後に天体観測に励むようになる。
日本語で検索しても情報がみつからないが、英語版のWikipediaには載っている。
Peltier の読みは、ペルチャーというより、ペルチェ素子のペルチェと同じなので、L.C.ペルチェ、とでもなるんだろうか。発音を聞くとペルティェに聞こえる。
本には、12個の彗星と6個の新星の発見者、とあるが、Wikipediaだと、12個の彗星のリンク先では名前の付いている10個が記載されている。
天文学者ハーロウ・シャプレーによって「世界で最も偉大なアマチュア天文家」と呼ばれたそうである。これは、変光星の観測を長年続けたことによるのだろう。アメリカのアマチュア天文学協会の統括組織である、天文学連盟では、The Leslie C. Peltier Award(翻訳すると、レスリー・C・ペルティエ賞になる)として、毎年天文学に貢献したアマチュア天文家を表彰しているそうだ。
私はあまりなじみのない人だったが、日本でいうと、同じく12個の彗星を発見した本田実のような人になるのだろうか。
私が紹介するのは、あまり本屋などでは見かけないものが多くなってしまうが、どれも読んでいて面白い本だった。天文学というよりは、その人の生き様のようなものが強く表れているものが多いかもしれない。