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ダンジョン飯にあこがれて 第七回

Rogue(1980年)/ NetHack(1987年)

Rogue(PC-8801版)とNetHack(PC-9801版)。
本来ネット公開のフリーソフトをパッケージ化した市販品。

ついに行き着く所まで行きついてしまった。「ローグライク」というジャンルの語源となっているゲーム、ローグ。そしてその直系の子孫と言われるネットハック。この二つをまとめて取り上げたい。

元々はUNIX用のプログラム

1980年というのは、PC-98もPC-88も初代機がまだ世に出てないくらい昔のこと。大型計算機用に作られた、まさに原初のコンピューターRPGである。
日本ではアスキー社が1986年に国産PC対応の市販パッケージを作ったが、当時は和製アクションRPGのザナドゥとハイドライド2が覇権を争ってた時代だったので、アスキーアート(文字)でのビジュアルとBGM無しという無骨な仕様は一般的なPCユーザーにはハードルが高かったように思える。
…日本にローグライクが根付くには、さらに7年後のトルネコの大冒険を待たなくてはならない。

Amulet of Yendor を持ち帰れ!

今回のスクショ撮影にはPC-8801版を使用した。

Rogueのゲーム目的は至って単純。「運命の大迷宮(Dungeons of Doom)」の地下26階にある「イェンダーの魔除け(Amulet of Yendor)」を回収し、地上まで引き返してくること。自分が一回行動すると少し時間が進むターン制システム。満腹度の概念あり。ダンジョン構造は自動生成。冒険は一回で完結し、拾ったアイテムの次回持ち込みはできない。…こんなところか。ひどくドSな運ゲーだが、ネタバレ関係なくプログラミングをした本人も遊べるRPG…となるとこれくらいやらないとつまらないのかもしれない。

ゲーム開始直後の様子

ゲームを開始すると地下1階の適当な小部屋に放り込まれる。「@」が自分である。なお今回はNetHackの前哨戦という位置づけなので、ビジュアルが近似するモノクロ設定にしてある。もともとアスキーアートのゲームだ、色を付けなくても大差ない 

行けるところをすべて行くとマップが完成する

「+」で表記される部屋の出口から出て、階層をくまなく探索すると、画面に地図が完成する。「#」は狭い通路の意。「%」は下の階への階段である。基本的にRogueでは複数の小部屋が通路で連結され、何処かにある階段で下に降りれる、という構造がランダムに生成され、それが延々と続くことになる。

通路が複雑に入り組んだ「迷路」が出現することもある

深層に行くにつれダンジョンの構造は複雑になっていく。脈略もなく設置されたトラップ。やっかいな特殊能力を持つモンスター。危険は飛躍的に高まっていき、生存を困難にしていく。

Rogue最強の敵、「D」

ゲーム終盤は階段を見つけたらすぐ降りる、速攻が最善手となっていく。「G」(グリフィン)「J」(ジャバウォック)「D」(ドラゴン)は有効な杖や巻物・飛び道具無しに相対すると敗北は必至だ…

ファ、ファリーーーーーーーーン!!!!

ざんねん!ふぁりんの ぼうけんは これで おわってしまった!…と、いう感じで、ざっくり1ゲームの流れを解説した。ビジュアルは非常に地味だが、その分想像力の余地が働く部分は大きい。トルネコの大冒険は何処まで行ってもデブのオッサンの冒険だが、Rogueは名前の付け方ひとつでフィジカルエリート女修道士とドラゴンの大激闘を想像することだって可能なのだ。

精神的後継作、NetHack

NetHackは、Rogueを改造・拡張したHackというローグライクゲームをさらに拡張したゲーム。概ね形が出来上がったのが1987年で、その後もアップデートを繰り返し、現在の所最新版は2020年版となっている。日本でもパソコン通信のできる環境にある人は比較的早期からアクセスできたし、1993年頃にはPC-98ユーザー向けにフロッピー付き書籍という形で出版されているので、スタンドアロン環境の人でも触るチャンスはあった。もちろん万人受けしそうな題材ではなかったが…。

ゲーム開始直後。「@」は自分。「f」はペットの子猫。

ゲームの表向きの目的はAmulet of Yendorを持ち帰ること…と一見Rogueと同じなのだが、至る所に手が加えられており、一筋縄ではいかない。まずキャラクターは個別の得意分野を持つ職業と性別を選ぶ。キャラクターにはLawful/Neutral/Chaoticのアライメントが設定されており、それぞれの属性を司る神様を信仰している。また、ペットの概念もあり、スタート時には必ず犬か猫のどちらか一匹がお供についてくる(冒険途中でペットとの別れや新しい出会いがあることもある)。

地下一階の探索を終えた図

迷宮の構造は自動生成…なのはRogueと一緒だが、階段を使うとマップが破棄されるRogueと異なり、どこまで下に降りてもまた戻ってくることができる。そのぶん中断セーブのファイルサイズもクソデカなのだが

ローグライクでは割とお馴染み、アイテム床置きショップ

自動生成なので運しだいではあるが、NPCの経営するショップが出現することがある。泥棒しようとすると手痛いしっぺ返しを食らうのはまぁ、お約束。

地下26階。右側の「%」(食ベ物)だらけの所はハチの巣(モンスターハウス)

モンスターハウスで荒稼ぎし、自分と同属性の神の祭壇で祈りを捧げ、ひたすら深層を目指していくとメデューサとばったり出くわす。彼女はゲーム後半、城階層の手前に待ち構える門番ボス。無策で殴りかかると…

ちーん。

シュ、シュローーーーー!石化で一瞬にしてゲームオーバー。おつかれさまでした…

今回のプレイでは行けなかった城

別キャラで撮影した城階層(この下には地獄階層がある)

一見すると装飾が増えたRogueのように見せかけて、ダンジョンの構造は後半からガラリと変わる。Amulet of Yendorは初見の想像より遥かに深い所に設置されているし、なんとか1Fまで持ち帰ると今度は天上界に献上に行く、という最終ミッションが課される。とにかくRogueの3倍はルールが複雑で、死にやすく、クリアまでの道のりが険しすぎて途方もない。なんせこの記事を書いてる時点でまだクリアできてない。無印Rogueでは物足りなくなった人のための上級者向けRogue、と言ったところか。やりがいはある。

原典は偉大

こうしてRogueとNethackを続けてやってみると、その奥深さに恐れおののく。アスキーアートによるビジュアル表現…ビジュアル…?は、プレイヤーの想像力で埋めてこそのものだが、実際想像力でどうとでもなってしまうものなのだ。ある意味具体的にドット絵や3Dモデリングで表現されるよりも強い。現代でも十分に戦える作品だと思う。


2024年現在、Rogue/Nethackをやるには

Steamで買うのが一番手っ取り早いと思います。Rogueの方はかなり初期のものなのでUNIX基準のUI(テンキー操作できない)のが難点ですが…

まぁ、テンキー操作できるRogueってのは原典というより派生系に近いんですが…(今回取り上げたASCII版は対応していた)
大深海水淵亭さんの「PC-8801版Rogueのメモ」が非常に参考になりました。なんと原盤のバグを修正する方法まで載ってる。

日本語じゃないと厳しいッスー!って方にはローグクローンIIとかJNetHackとかが良いんじゃないでしょうか。少し前のプログラムなので現行ウィンドウズで動くかはちょっと怪しいですが(要調査)

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