ダンジョン飯にあこがれて 第十回
…今更気づいたんですが、前回からダンジョン飯要素が全くない!次回から復活します。もうしばらくお付き合いください。
ブランディッシュ3 スピリット・オブ・バルカン(1994年)
1994年というと、アメリカでは3月にThe Elder Scrolls: Arenaが出ている。FPSの伝説的名作Doomも前年末の登場で、主観でグリグリ回転する3Dダンジョン描画が当たり前の時代が来ていた。要求スペックも爆上がりだが。
日本だと、ブランディッシュ3のリリースされた11月末は、セガサターンとプレイステーションの次世代機戦争の勃発前夜といったところ。この頃なら中古の型落ち機種を狙えば、エロゲ用途のPC-98も家庭用ゲーム機並みの出費で手に入ったはず。ブランディッシュシリーズはロースペックマシンでも余裕で動く、財布に優しいゲームだったことは明記しておきたい。
「バルカン事件」の真相が明らかになる…?!
バルカンというのは、初代ブランディッシュのマニュアル掲載小説から語られるドーラの師匠の名前。1,2とはぐらかされ続けてきた「で、結局のところアレスはバルカンを殺してるの?殺してないの?どっちなんだい?」という問いに答えが出ると聞いて、シリーズファンは大いに沸いた。はず。
キャラデザ変わった?
これはブランディッシュ3を語る上で避けて通れないことなのだが、画風が1・2と大きく変わっている。前作までの原画担当が退職してしまったためで仕方のないことなのだが、熱心なファンほど拒否反応が強く、不当に低い評価を下していたような気がする。ゲームのシリーズもので毎作顔が違うなんてよくあること。先入観は捨てていきたい。
選べる4人のキャラクター
本作は開発中の小出し情報の段階から
「プレイアブルキャラとしてドーラも選べるようになる」
ということを明らかにしていた。
彼女の師匠の話なのだから、そういうこともある。
遠距離魔法職としての立ち位置も予想に容易い。
しかるにその次に出てきた情報が、
「ドーラのライバルか?女格闘家アンバー登場!」だった。
格闘技キャラ!確かに前作でキャラ立ちしてたし、面白そうな気がする。
そして最後に発表されたのが、
「謎に包まれた闇の暗殺者ジンザ(本名:尾白甚左ェ門)」
そ、そう来たかァ~~~。ブランディッシュにレッド・ニンジャは付きものだった。毎回別人のはずだが。自分で操作できて嬉しいのは間違いない。
拡張された特殊技の概念
ブランディッシュ3の追加要素の一つに、「戦闘時に一定の条件を満たすと、通常とは違う特殊攻撃が発動する」という物がある。2D格闘ゲームのコマンド入力みたいなもの。「えっ!マウスでコマンド入力を?」と思うかもしれないが、そんなに条件は厳しくない…ないんじゃないかな…
ジンザ以外は。
それにしても…プレイアブルキャラが4人いて、そのそれぞれが専用装備の組み合わせが反映されるキャラグラを持ち、特殊技のモーションパターンまで持つ…考えてみると描かねばならないドット絵の量が滅茶苦茶増えている。スタッフの仕事量を考えるとゾっとする。
広すぎるフィールド
3の舞台となる小国フィベリアは、ブンデビアよりも更に広い。地形のバリエーションもおおよそ考え付くものを全てぶち込んでおり、洞窟・墓地・豪邸・砂漠・遺跡・海岸・ジャングル…ジャングル!?
シナリオをきちんと読みながら取り組むと、クリアまでに数十時間はかかってしまうだろう。えっ、これを4人分やるんですか…?
結論から言うと、やらなくても問題はない。
マルチキャラクターではあるが、マルチサイトではない
アドベンチャーゲームのスタイルのひとつに「マルチサイトシステム」という物がある。複数の主人公キャラが存在し、シナリオを読む時は観測できない「この時別の主人公はどこで何をしていたか」を主人公を変えて補完し、全ての主人公でクリアすることで物語の全貌が見える、というもの。
ブランディッシュ3は、そういうゲームではない。
誰でやっても(ほぼ)同じマップだし、同じ話の流れになるし、出てくるボスも同じ。候補が4つしかないキャラメイクみたいなものだろう。
推しキャラでクリアできれば終わりで良い。
まぁ、それでもやりこむ人は全キャラ制覇した上にリザルト向上させるための周回をやりだすのだが。時短の方法は無くもない。
シナリオ崩壊上等のショートカット
本作では、結構な数の抜け道が存在しており、緊急脱出ワープ(誤って詰み確定の状況でセーブしてしまった時の救済措置)を悪用したり、特定の扉を開けるのに使うユニークキーを温存して別地点で流用することで、クリアまでの時間を縮めることができる。テストプレイの時にすぐ気づきそうなレベルの穴なので、おそらくわざと残してあるのだと思う。
これを最大限に利用すると、ゾールは玉座の間でぼんやりしている所を一方的にぶちのめせるし、アカシック・ギルドの隠れ家には立ち寄ることなく火山に行けるし、蜘蛛女には特に出会うことなく終わる。RTAを追求できる懐の深さがあると言えるかもしれない。
これで終わりですか?
今にして考えると、ブランディッシュシステムでのゲーム作りはドッター人海戦術の賜物であるし、そもそも1994年はあと数年でPC-98の時代が終わり、Windowsの時代になる頃。とても続編なんて産まれる余地は無かった。
それでもファンは次なるアレスやドーラの活躍を待ち、二年後のブランディッシュVTをこれは外伝作品のようなものだから、と自らに言い聞かせ、それがWindows用ブランディッシュ4へと進化した時点でようやく、あぁ、アレスとドーラの物語って3で終わってたんだな、と実感したのだと思う。
惜しむらくは遂にコンシューマにもWindowsにも移植される機会が無かったこと。シリーズ随一のボリュームを誇るのに、シリーズ中もっとも存在感が無くなってしまった。果たしてEGGコンソールでの復刻はあるのだろうか。
未来に期待したい。