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ダンジョン飯にあこがれて 第九回

サムネイルがセンシティブ判定に引っかかる可能性があったので海苔ガードをした。…実際の所、もしもNintendoSwitchで配信するならこのシーンだけはちょっとダメだと思う。がんばれEGG、あなたならなんとかできる…!というわけで前回に引き続きブランディッシュシリーズ回。

ブランディッシュ2 ザ・プラネット・バスター(1993年)

ブランディッシュ2(PC-9801版)

ブランディッシュ2がリリースされたのは1993年の春。アメリカでアイ・オブ・ザ・ビホルダー3がリリースされたのとほぼ同時期である。時代的には、前年で8ビットPCは高級ゲーム機としての役割をほとんど終えており、Windows 3.1はまだ出る前、という16ビットDOSマシン全盛の時代。
とは言っても、PC機種乗り換えは手持ち全てのソフトウェア資産の放棄に等しい大決断。当時PC-88は持ってたけど、PC-98に乗り換えることはできなかった…という人は少なからず居る。そういう過渡期の作品である。

強化されたストーリーライン

今作は、前作とはやや違うアプローチでデザインされており、ダンジョン内でのサバイバル感よりもストーリー性を重視している。

スタート直後から会話劇が展開する。RPGっぽい…!

物語は、小国ブンデビアで捕らえられ身ぐるみ剥がされて監獄にぶち込まれた所から始まり、今回も地上を目指して監獄を登ることになる。もっとも今回は地下4階スタートなので地上にはすぐに出られるのだが。問題は…

監獄島外観。オープニングの1枚絵

問題は、監獄は絶海の孤島にあったということ…。進退窮まり万事休すか、という所に現れたのが、前作のヒロイン…ヒロイン?ドーラ・ドロン。

これが1993年のツンデレか!

彼女の乗ってきた小舟に飛び乗って、からくも監獄島を脱出する。これまでこんな頼もしいドーラを見たことがあっただろうか。いやない(反語)

このスチール、作中屈指の美麗塗りだと思う

しかし、海の荒れは予想以上で、やむなく別の離れ小島に避難することに。海が落ち着くまでの雑談で、なぜドーラが良いタイミングで来たかを知る。

やっぱタダじゃ助けてくれないかー。

前作の終盤で何の説明もなく使っていたラスボス特攻の剣、プラネット・バスター。その力を何者かに狙われたことが、今回の収監に繋がったらしい。

(サブタイトル回収)

こうして、当面の目標は「プラネット・バスターを見つけだし、取り返すこと」に設定され、広大なフィールドを探索していくことになる。もちろん、当面の目標が達成されると次の目標が提示されるの繰り返しで、最終的にはラスボス戦が待っているのだが。うーん、まごうことなきJ・R・P・G。

進行上の選択権は少ない

アンバー。強いので戦わずにシナリオ進めるのも手

ストーリー性を重視した結果、敷かれたレールの上を走っている感は否めない。一部やらなくても進められるイベントはあることはあるが、イベントそのものの難易度が高いゆえの救済措置、程度の意味合いに見える。(忍者屋敷、対アンバー戦、城壁のパズルなど)
進行にやや窮屈な印象を抱く人もいるかもしれない。

装備の組み合わせの自由

一方、戦闘面は大幅に拡張を遂げた。装備の組み合わせ概念である。

これは当時の販促チラシ掲載画像

左手と右手、それぞれに持つものをプレイヤーが選択することで戦闘にバリエーションが生まれる。気分転換に両手持ちの斧やハンマーを持ってもいいし、両手に盾を持って被ダメを極限まで抑え込むのも有効。何より、試すこと自体が楽しい。ダンジョンには十二分な量の武器が落ちている。どんどん試して、バキバキ折ろう。

マップ完成率が…消えた…?

あれ、何か足りないような…

今作も存在するクリア後のリザルト発表。ゲームの難易度が少し上がっていることもあり、前作体験者でも初見で好成績を収めるのは難しいと思う。
残念なのはマップ完成率の算出が行われない点。そこは大事なとこだろう…
この点は2年後発売されるリニューアル版(新バージョン)では修正されているが、プロジェクトEGG配信のブランディッシュ2は初期版のためマップ完成率は無い。EGGを使って遊ぶ場合は諦めるしかない。

豊富な一枚絵×莫大なキャラチップ

ドッターの皆さーん!!ありがとうございます!!!

日本ファルコムはまだコンシューマ本格参入前、イースは停滞中、英雄伝説はガガーブ開発中という時期で、ブランディッシュシリーズは特にビジュアルに力を入れていた作品という印象がある。イベント毎の一枚絵、インタールード、もちろんOPやED。先述の装備パターンシステムがあると、描くべきキャラチップの量も尋常ではない。ドッターが力技で解決する時代でしか許されないゲームデザインだったのかもしれない。
まぁ、3はさらにドット絵の量が増えて無茶苦茶な事になるのだが

最強のエンターテインメント

ドーラさんもご満悦

ストーリーラインが強化されたことにより、物語に没入する楽しみ。システムが強化されたことにより、戦闘に没入する楽しみ。両輪が揃い、ここにブランディッシュ2は完成した。そしてその両輪を下支えするのは、90年代の創り上げた16色ドット絵とFM音源のチップ・チューンという古代の技術。個人的には現代においてもなお、語り継がれる価値のある物だと信じている。今一度の復刻を願って止まない。


「プレイヤーの自己投影」から「アレス・トラーノス」への変化

プレイヤーに人格が委ねられ、善にも悪にもなりうる1のアレスと異なり、2のアレスはシナリオライターが具体的にイメージする行動指針、価値基準の下に動いている感があります。
わかりやすく言うなら、「アレスはそんなことやらない」です。
裏付けになるのはゲームの発売から約5か月後。今作のシナリオライターがラノベ月刊誌に「ブランディッシュ・アレス」なる小説を掲載したこと。
そこにはゲームと違い、個の人間として考え、行動し、他者と関わりあうアレスの姿が描かれています。
ラストネームもこの時付きました。アレス・トラーノス。

大昔のファルコム公式サイトにも掲載されてたんだけど

しかしこの小説、ゲームと地続きの物語と解釈するには、矛盾点が山のようにあって無理筋です。あくまでキャラクターからのインスパイア、作者の書きたい世界に作者の考えるヤング・アレスを放り込んだらこういう立ち回りになる、という思考実験ぐらいに思っておきましょう。


唯一のCS機用、SFC版

ニュアンスは伝えられてると思う

コンシューマ機用としてはスーパーファミコン用に出たものがあります。媒体の違いで忠実な移植とはいかず、原作マップの一部を省略して再構成。ですがそれが逆に良い方向に働いていて、例えばCASTLE WALLのマップなんかは数多の原作プレイヤーの心を折った10マップを4マップに圧縮することに成功しています。ダレがちな中盤を畳み込んだ、全体のテンポが良くなっている、と好意的評価もチラホラ。1と2をやるだけならSFC互換機での運用は大いにアリ。3はどうにもならないんですけどね…。


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