労働判例を読む#213
【ニチイ学館事件】大阪地裁R2.2.27判決(労判1224.92)
(2020.12.30初掲載)
この事案は、総務・労務管理系の管理職者であった従業員Xが、法人営業等を命じられてその成績が良くないという理由で降格された会社Yによる人事処分について、違法と争った事案です。
裁判所は、Xの請求を大筋で認めました。
1.実務上のポイント
Yには、従業員に人事異動を命じる権限がありました。
けれども、それが違法とされた背景には、Xの管理や人事考課に関し、Yの一貫しない対応があったように思われます。
それは、総務・労務管理系の業務を中心としてきた、しかも管理職者であったXに対し、営業の、しかも現業を担当させる人事異動を行い、必ずしもXの適性に合った人事異動と言えないような状況をY自身が作り出しておきながら、Yの営業成績が不十分であるという評価を、1年も経たないうちに与え、不利益な処分を行っているからです。
これでは、最初からXを降格させるという結果ありきであると見られかねません。
すなわち、Xに営業の現業を担当させる合理性が十分説明でき、あるいはそのような適性が無いにも関わらず敢えて営業の現業を担当させるのであれば、例えば新しい仕事の幅を広げてもらいたいという理由の場合には、そのために必要な教育や、成果を上げるまでのサポート、見極めるための十分な機会や期間を与えるなどの配慮がされれば、Yの対応が違法と評価される危険性はかなり低減できたでしょう。
このように、この裁判例は、最初から結論ありきと誤解されるような人事には、それが無効とされるリスクが伴うことを示した事案として、参考になります。
※ JILA・社労士の研究会(東京、大阪)で、毎月1回、労働判例を読み込んでいます。
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