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経営組織論と『経営の技法』#242

CHAPTER 10.1.1:経験による学習 ⑥まとめ
 経験による学習の最も重要な点は、経験を経験のままにしておかないということになります。組織の中ではさまざまな出来事を経験することになりますが、成功した経験であれ、失敗した経験であれ、この経験をそのままにしておけば、人々の学習はなかなか進みません。学習は個人によってなされるものでもありますが、組織における学習を促進するためには、内省を促したり、マネジャーがフィードバックをしたり、みんなで対話するようなこと、あるいは、それを次に活かすような機会、といったことが組織においては必要になると考えられるのです。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』224頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 ここでは、個人の経験も含め、組織全体の学習のために必要なポイントとして、組織にそれが還元されることの重要性と、そのための具体的な方法などが示されています。
 これは、前回(#241)と同様、会社組織のリスク管理の観点から見ても、好ましいことです。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 経営者個人の学習が、ガバナンスの観点から見ても、リスク管理上好ましいことは前回指摘したとおりです。
 ここではさらに、その経験を会社組織に移していくことを、メリットとして指摘できるでしょう。
 経営者がどのようなリスクに対しどのように対応し、どのような判断を下したのか、ということを会社組織が共有するようになれば、同様のリスクへの対応について会社組織側も予測が立つようになるだけでなく、経験を生かした調査検討が可能になり、そのことによって検討スピードが上がったり、精度が上がったりすることが期待できるからです。

3.おわりに
 本文で指摘するような、個人の経験やノウハウを組織に還元する方法は、#240でも検討しましたので、そちらも参照してください。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


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