経営組織論と『経営の技法』#287
CHAPTER 11.2.3:構造的空隙を作る ②構造同値
まず、構造同値から説明しましょう。構造同値とは、ネットワークにおいて、他の参加者と同じ位置を占 めていることを指します。
図11-2は、Aという組織が、B、C、Dという組織とつながっているネットワークの図です。たとえば、AがB、C、Dからそれぞれ部品を調達している場合、このようなネットワークになりますし、取引関係でなくても、Aが、B、C、Dという組織とそれぞれ担当者同士で非公式(インフォーマル)なやりとりがあり、B、C、Dそれぞれは、特に知り合いではないような関係でもこのようなネットワークで示すことができます。このようなネットワークの構造になっているとき、BとCとDは構造同値の関係にあると呼びます。つまり、3つの組織ともAとしか関係がないという点で同じネットワークの構造をしているからです。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』258~259頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018)】
この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。
1.内部統制(下の正三角形)の問題
会社組織内の問題としてみると、BCDのように相互に関係がない、という状況は考えにくいでしょう。BCDの業務がもともとそれぞれ関係がなく、いずれもアウトソーシングしていたような状況であれば、それぞれ無関係で動けるかもしれませんが、同じ組織としてBCDを内部に取り込んでいるのに、相互の関係をわざわざ遮断するのであれば、同じ組織に取り込む意味がそもそもなくなってしまいかねません。
もちろん、BCDが競争関係にある営業部門のような形で、相互関係を遮断し、競わせるような組織にする場合もあるでしょうが、その場合でも経営側から見ると、BCDそれぞれの成功体験などは共有させることで、自分の手の内を隠しあうような競争ではなく、お互いの手の内を明らかにして競争することで、より高いレベルでの競争やノウハウの蓄積を期待するでしょう。
このように、組織内でBCDのように相互に関係がないという状況は考えにくいのです。
2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
会社外の問題としてみると、上記本文で検討されたとおりです。
むしろ、会社内とは逆にBCDが無関係である方が多いでしょう。よほどグループや系列として密接な関係がない限り、例えば取引先を分散させるなど、相互の関係を遮断すべき事情の方が強いと思われます。
3.おわりに
けれども、コミュニケーションを強めることのメリットなどもこれまで検討してきたとおりです。これらの関係を遮断させるべき側(Aの側)からの見え方を考えていきます。
※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。