労働判例を読む#494
今日の労働判例
【龍生自動車事件】(東京高判R4.5.26労判1284.71)
この事案は、コロナ禍により倒産したタクシー会社Yの運転手Xが、解雇を無効として争った事案です。2審も1審とほぼ同じ内容で、いずれもXの請求を否定しました。
ここでは、1審判決の解説の概要を示しますので、詳細は、1審判決の解説をご覧ください(東京地判R3.10.28労判1263.16、労働判例読本2023年版139頁)
1.判断枠組み
ここで特に注目されるのは、解雇の合理性を判断するための判断枠組みです。
すなわち、裁判所はいわゆる「整理解雇の4要素」ではなく、2つの判断枠組みを採用しました。
しかし、例えば、「ネオユニットほか事件」(札幌高判R3.4.28労判1254.28、労働判例読本2023年版125頁)では、「整理解雇の4要素」で判断しています。結論も、解雇を無効としました。
このように見ると、判断枠組みの違いが大きな問題のようにも見えますが、実際はそのようなことはありません。ネオユニット事件判決では、本判決で判断枠組みから外されている判断枠組みについて、簡単に検討しているだけだからです。
2.実務上のポイント
このように、会社が倒産した場合の解雇についても、「整理解雇の4要素」が適用される可能性は十分にあるが、判断枠組み自体が結論に重大な影響を与えるわけではない、と考えられます。
同じ解雇であっても、従業員の側に問題のある通常の解雇と異なり、経営の側に問題のある整理解雇は、解雇が有効とされるためのハードルが高くなっていますが、事業終了の場合もこれと状況は同じであり、判断枠組みは事案に応じて柔軟に設定されるにすぎないからです。
※ JILA・社労士の研究会(東京、大阪)で、毎月1回、労働判例を読み込んでいます。
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