経営組織論と『経営の技法』#276
CHAPTER 11.2:ネットワーク論 ①意味とイメージ
組織は別の組織と個別にそれぞれ関係を持っていますが、1つの組織としか関係を結ばないわけではありません。普通、組織は多くの組織と関係を結んでいます。ですから、自分たちと関係を持つ他の組織も同様に多くの組織と関係を持っていることになります。
それぞれの関係は、前節で取り上げてきた資源の交換、あるいは情報の伝達、影響を与える/受けるといった権力関係、情緒的な関係など、さまざまな関係で結ばれています。このことを踏まえれば、組織は他の組織との直接的あるいは間接的な関係の網の目の上にあると見ることができます。このような関係の網の目を理解する見方として、ネットワークによるアプローチがあります。
海外へ行くときには必ずしも1つの航空会社の飛行機に乗って行けないことがあります。ある航空会社がどの都市にでも行けるようにしようとすれば、莫大な投資がかかることになります。そのために航空会社は他の航空会社と連携して、乗り継ぎをすることで世界中の都市間を結び、円滑な移動を可能にしています。また、航空会社の多くはマイレージサービスと呼ばれる旅行距離に応じたポイントサービスを行い、獲得したポイント(マイル)に応じて航空券をもらえることになっています。
しかし、ポイントサービスを提供している航空会社を利用して行ける都市が少なければ、サービスの価値は半減してしまいます。そこで航空会社間でネットワークを結び、ネットワークで結ばれた航空会社のポイントであれば、相互利用できるようなサービスを行っています。しかし、このネットワークに入ることは、他のネットワークに入っている航空会社との関係が結べないことにもつながります。つまり、ネットワークに入ることで、自分たちの組織の行動が制約されることにもなるのです。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』252~253頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018)】
この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。
1.内部統制(下の正三角形)の問題
上記本文の具体例である航空会社のネットワークの場合は、会社組織の限界を相互に補い合っていることが分かります。つまり、組織論から見た場合、組織の不足を相互に補い合っているのです。
2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
投資家である株主から投資対象である経営者を見た場合、なんでも自前にこだわり、自社組織をいたずらに肥大化させるのではなく、外部リソースを活用する、という経営判断を経営者が行った、ということになります。
3.おわりに
この外部ネットワークを、次回から分析していきます。
※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。