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経営組織論と『経営の技法』#299

CHAPTER 12:組織を変える
 最後の章では、組織が変わることについて考えていきます。ここまで、組織の力を大きくするための組織論について考えてきました。しかし、組織が作られて時間が経過する中で、これまでの組織のあり方が組織の力にならないこともあります。
 たとえば効率的な運営をするために作られた組織が、安定した企業環境では効果的であっても、不確 実な環境に変化すれば、それに対して柔軟に対応するような組織形態に変更することが求められるかもしれません。あるいは、知らぬ間に自分たちの組織が変わっていってしまうこともあります。組織の規模が変わっていけば、たとえ組織の形態やさまざまな仕組みを変えていなくとも、組織のありようは変わっていってしまいます。
 10人の組織であれば情報伝達の流れなどはわざわざ作らなくとも、みんなで共有することができるでしょうが、規模が100人になると情報伝達のルートをきちんと定めておかなければ、一部の人に情報が偏ったり、重要な情報が意思決定をする人に伝わらなかったり、といった問題が起こることになるでしょう 。そうなれば、組織のありようを変更しなくては効率的な組織運営ができなくなりますし、一方で放っておけば、偏りのある情報伝達のルートが自然と生まれてしまいます。この章では、このような組織の変化について考えていくことにします。
 組織が変わるという ことについては、大きく3つの考え方があります。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』267頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 上記本文では、情報の流れが具体例として示されています。リスクを取ってチャレンジできる経営を目指す会社組織を作る場合には、たしかに経営が必要な情報にアクセスしていない状況での経営判断は危険です。
 すなわち、適切な意思決定、すなわちいわゆる「経営判断の原則」が適用されるためには、十分な情報で十分検討されたことが必要だからです。
 このように見ると、適切な意思決定のためには適切なプロセスが踏まれる(そのことで十分な情報で十分検討される)ことが必要であり、上記本文で指摘する情報もその重要な一部として、伝達ルートが問題になるのです。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 投資家である株主から投資対象である経営者を見た場合、事業が大きくなるにつれて会社組織が大きくなっていく(従業員が増えていく、など)ことになりますが、上記のことからわかるように、単に人手だけをかき集めるのではなく組織化が必要ですから、組織化し、組織をマネジメントできる能力が経営者に必要となります。

3.おわりに
 組織の変化を検討する前に、そもそも組織化はなぜ必要なのか、何のために必要なのか、を確認しました。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


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