労働判例を読む#369
今日の労働判例
【大阪府・府労委(大阪市・市労組)事件】(大阪地判R3.7.29労判1255.49)
※ 週刊東洋経済「依頼したい弁護士25人」(労働法)
※ 司法試験考査委員(労働法)
※ YouTubeで3分解説!
https://www.youtube.com/playlist?list=PLsAuRitDGNWOhcCh7b7yyWMDxV1_H0iiK
この事案は、大阪市Xの庁舎の地下の労働組合事務所をXが使用不許可処分にしたことに対して、労働組合K(混合組合)の団体交渉申し入れをYが拒否したことから、労働委員会YがXに対して、団体交渉に応じることなどを内容とする救済命令を出したところ、Xがこの救済命令の取消しを求めて訴訟を提起したものです。
裁判所は、Xの請求を否定しました。
1.混合組合
混合組合は、地公法が適用されて団体交渉権のない者と、労組法が適用されて団体交渉権のある者が混在する組合です。混合組合に団体交渉権があるかどうか、議論されていますが、裁判所は、労組法適用組合員に関する事項に関し、団体交渉権がある、と判断しました
そのうえで、組合事務所の利用は、地公法適用組合員に関する部分だけを峻別できる問題ではない等の理由で、組合全体について団体交渉権があると判断しました。
多くの公務員について団体交渉権が否定されている中で問題となる論点です。民間企業としては、問題になる場面が極めて限られるでしょう。
2.実務上のポイント
実務上注目されるのは、団体交渉事項でない事項(本事案では、管理運営事項とされるもの)があり、その精査が必要だから、という趣旨での団体交渉拒否です。
団体交渉事項でないのだから、団体交渉を拒否する理由になるだろう、とも見えるのですが、裁判所は団体交渉事項かどうかを十分調査していない、仮に団体交渉事項でないことが後に判明すれば、その段階から団体交渉の対象から外せばよい、として交渉義務違反を認めました。
事案によって団体交渉事項でない事項かどうか、検討しないと分からない場合もあるでしょうが、そのことを理由に実際に団体交渉を拒否できるのは、団体交渉事項でないことが明確な場合に限られる、ということになります。もちろん、どのような事項が問題になっているのか、これまでどのような経緯があったのか、等個別の事情も考慮して「拒否」に該当するかどうか等が判断されることと思われますが、「誠実交渉義務」に違反しないための配慮が十分かどうかについて、注意が必要です。
※ JILA・社労士の研究会(東京、大阪)で、毎月1回、労働判例を読み込んでいます。
※ この連載が、書籍になりました!しかも、『労働判例』の出版元から!
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