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経営組織論と『経営の技法』#306

CHAPTER 12.2:組織のライフサイクル ④起業家段階の危機
 この段階での危機は、リーダーシップの必要性によるものです。組織が順調に成長すると、従業員が増加することになります。しかしながらこの時期、起業家の多くは製品開発やマーケティングなど市場に目が行きがちになります。そのため、企業規模に応じた組織構造をきちんと定めることが手薄になりがちです。つまり、組織をマネジメントするリーダーシップが失われがちになるのです。
 ホンダを起こした本田宗一郎は根っからの技術者でしたが、その横にはお金や組織の差配を行った藤沢武夫がいました。彼がいたからこそ、ホンダは大企業へと成長できたといえます。藤沢がホンダに入ったのは、ホンダが1946年に起業してから3 年ほど経った時期です。ちょうどホンダは、ここでいう起業者段階にありました。藤沢が入って組織体制をきちんと固めたからこそ、技術者の本田宗一郎は新製品の開発にエネルギーを注ぐことができ、企業組織としてホンダは次の段階に進めたといえます。
 反対にこの時期、リーダーが技術や製品開発、マーケティングなどにエネルギーを費やし、組織内部へのリーダーシップが発揮できないと、組織はなかなか大きくなっていくことができずに、停滞してしまうのです。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』270~271頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 前回#305の末尾で指摘した、成長してから組織を作るのではなく、成長するために組織を作るという発想です。ここでは経営者の能力を有効に活用することに主眼が置かれていますが、ここで組織の基盤ができれば、その後の成長もより容易になっていきます。
 特に、本田氏に対する藤沢氏の役割は、「番頭」「参謀」「右腕」など、組織的に経営者をサポートするうえで非常に重要な役割ですから、これを先に確保することはその後の成長にとって非常に有意義です。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 投資家である株主から投資対象である経営者を見た場合も、必ずしも藤沢氏のような「参謀」を見つける必要がある、というわけではありませんが、経営者としては、自分自身や会社組織の成長や発展のために何が必要であるのかを見極め、先手を打ってその確立と充実に動ける実行力が重要です。

3.おわりに
 英語の勉強と似ています。
 ヒアリングができるようになったらスピーキングする、という人は永遠に英語を喋れませんが、スピーキングをしながら自分の足りない能力を補強できる人は、英語が上手になります。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


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