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経営組織論と『経営の技法』#288

CHAPTER 11.2.3:構造的空隙を作る ③競合関係
 このような構造同値の関係にある組織同士は、競合関係になりやすいといわれます。なぜなら、資源依存パースペクティブの観点から考えれば、Aの持つ資源をB、C、Dの間で取り合うことが起こりやすいからです。
 当然ですが、競合関係になれば、組織は自分の思ったとおりに行動がしにくくなります。たとえば、高く売りたくても競合組織との関係上、安く売らなくてはならないことがあります。しかし、BとCとDが結託したらどうなるでしょうか。たとえば、しばしば公共事業の入札では、建設会社間での談合が問題になります。もし、談合ができなければ、入札に参加する組織間で競合関係が起こり、入札を実施する自治体などはより安い金額で公共事業を行うことが可能になりますが、入札をする建設会社間で連絡を取り合い、調整してしまえば、そうはなりません。Aに位置する公共団体は、結託していないときよりも明らかに不利になります。ですから、Aとすると、できればBとCとDの間に関係ができないほうがAにとって有利な関係となります 。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』259頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 会社組織内の問題としてみると、BCDの「結託」が法的に好ましい形態になれば労働組合になるでしょう。他方、時々見かけますが、頼りない上司に対して徒党を組んで反抗して業務上の指示に従わずにボイコットするなどの「逆パワハラ」のような「結託」もあります。
 会社の労務管理については、どうしても会社が優位に立ってしまってバランスが悪くなりがちですから、前者の労働組合の存在と活動は上手に活用すべきですが、後者の「逆パワハラ」のような結託は認めるわけにいきません。このような見極めと対応を適切にすることが、会社の労務政策上必要とされることであり、特に後者の「逆パワハラ」のような結託に屈せず、毅然とリーダーシップを発揮できることが、管理職者に求められます。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 会社外の関係で、上記本文では談合など違法な状態になり得ることを指摘しています。
 分断されているとAの方が強くなり、結託するとBCDの方が強くなるという関係を見ると、力関係の問題であり仕方がないことと感じる面と、行き過ぎると市場競争が破壊されると理解できる面があります。独占禁止法や下請法のような経済法は、このバランスを取り、経済の競争環境を維持します。

3.おわりに
 どこまでが許されてどこからが違法なのか、というのは法律問題ですが、その背景にはこのようなコミュニケーションの問題があります。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


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