労働判例を読む#442
【学校法人河合塾(雇止め)事件】(東京高判R4.2.2労判1271.68)
※ 司法試験考査委員(労働法)
※ YouTubeで3分解説!
https://www.youtube.com/playlist?list=PLsAuRitDGNWOhcCh7b7yyWMDxV1_H0iiK
この事案は、予備校講師Xが、生徒のアンケートなどに基づく人事考課が悪いことを理由に担当コマ数を削減した契約更新を、予備校Yから提案されたところ、それに不満があるために拒絶したところ、契約更新されなかった(雇止め)事案です。
1審2審いずれも、契約更新の拒絶(雇止め)を有効としました。
1.有効性の根拠
この点は、1審と同様ですから、ここでは特に注目されるポイントを確認しましょう。
1つ目は、更新の期待の内容です。2審も、同じコマ数での契約まで期待できない、と判断しました。「コマ数減の提示をされる可能性を前提としつつ、少なくとも講座を複数担当する内容の出講契約」の更新の期待だけが認められたのです。
2つ目は、評価制度の合理性です。Xが懲戒処分を受けていたなど、問題のある言動があったことの他に、生徒による評価(授業アンケート)など、非常に丁寧な人事考課制度とプロセスが実際に運用されています。特に、従業員に対して不利益な処分を行う場合などには、その内容が合理的であるだけでなく、反論や改善の機会を与えるなどのプロセスも重視されますが、本判決もその一つの例と言えます。
2.実務上のポイント
2審で新たに追加検討された論点の1つに、Xに対する懲戒事由となった、経営に対する批判のために名刺を配布した行為について、Xは、労働組合の結成準備行為だから労組法によって合理性が認められる、と主張しました。
これに対して裁判所は、名刺のどこにも労働組合結成に関する記載がないなど、結成準備行為と認められないうえに、Yの施設利用権を制限すべき合理性もない、として懲戒処分を有効としました。
この事案では、労働組合結成準備、という理由を後付けで主張しているように見えますが、実際に当初からそのような趣旨の活動を明言している場合には、より慎重な判断がされるでしょう。従業員の抗議活動への対応に際し、留意すべきポイントの1つとして参考にしてください。
※ JILA・社労士の研究会(東京、大阪)で、毎月1回、労働判例を読み込んでいます。
※ この連載が、書籍になりました!しかも、『労働判例』の出版元から!