経営組織論と『経営の技法』#235
CHAPTER 10:新たなことを学ぶ
第9章では、キャリア論から個人の成長に関して考えてきました。個人が新しい情報を得て、学び、知識を得るのと同じように、組織も新しい情報を得て、学び、知識を得ていく必要があります。また別の言い方をすれば、そもそも組織が人の営みの集合体である以上、組織には日々たくさんの情報や知識が集まることになります。そして、それらの情報や知識を組織が有効に使えるかどうかという点は、組織にとって重要になります。
私たちは、先人たちの経験から得られた知識や情報のうえで生活をしています。もし先人たちの知識がなければ、私たちは動物と同様に、生まれるたびに常に原始時代の生活からスタートしなくてはなりません。過去の人々が培ってきた知識や情報のもとに、生活がスタートしているために、私たちは発展することができるといえます。
企業組織においても、もし組織の先人たちが仕事人生の間にようやく得られた知識や情報が次へ伝えられなければ、新しく入った人々は、また同じことの繰り返しになってしまいます。組織にとって新しいことを学び、それを次へとつなげていくことが組織のより良い発展につながると考えることができるのです。この章では、組織における学習について考えていきます。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』221頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018)】
この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。
1.内部統制(下の正三角形)の問題
会社組織を人体に例えれば、会社組織の能力が高まるためには、会社組織が学習し成長することが必要、ということになります。
2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
このことは、投資家である株主から経営者を見た場合にも、明らかです。
すなわち、経営者は株主から「適切に」「儲ける」ために、会社経営を託されますが、そのためには、市場の競争で勝ち続けなければなりません。一発勝負は、普通、会社経営ではありませんので、市場での競争相手に負けないように、進化し続けなければなりません。
したがって、経営者は会社組織自体の学びを上手にマネジメントできなければなりません。
3.おわりに
会社組織自体に、学び、という考えを当てはめるところが、非常に興味深いところです。会社組織自体が、市場競争でのプレーヤーである、という発想が当てはまる理由でもあります。
※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。