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労働判例を読む#155

「シェーンコーポレーション事件」東京地裁R1.3.1判決(労判1213.5)
(2020.5.15初掲載)

 この事案は、外国語学校Yの講師Xが、更新拒絶されたことを不服として、自分が依然として従業員の立場にあることの確認を求めた事案です。
 1審は、Xの請求を否定しましたが、2審はXの請求を肯定しました。

1.有給休暇

 最大の論点は、Xの休暇が、有給休暇に該当するか、無断欠勤に該当するか、という点です。
 この点、1審は、Xの有給休暇20日/年のうち15日は、Yに時季変更権のある有給休暇であり、その分については、Xの休暇取得の申し出をYが承諾しなければXは有給休暇を取得できない、ところが、XはYの承諾を得ずに一方的に休暇を取得したので、この部分は無断欠勤になる、と判断しました。
 これに対して2審は、Xが2年間で取得した49日の休暇全て適法であり、無断欠勤ではない、と判断しました。
 このうち14日はYが就労を免除したものだから、無断欠勤でないとしました。
 問題は、有給休暇と時季変更権です。
 2審は、①Yが時季変更権(但し、年間5日を超える部分だけ)を取得するためには、事業場ごとの労使協定が必要なところ(労基法39条6項)、事業場ごとの労使協定がないことから、法定の有給休暇の時季変更権(年間5日を超える部分の時季変更権)は発生しない。②就業規則での有給休暇は、Yが時季変更権を有するが、法定の有給休暇との区別・特定ができないため、結局、全体として時季変更権は発生しない。という理由で、Xの申し出た日に有給が取得でき、無断欠勤ではないとしました。
 このように、有給休暇のルールの在り方について、かなり突っ込んだ議論がされたのです。

2.実務上のポイント

 法定の有給休暇以上に多くの有給休暇を付与する会社は、本事案のYのように増えてきた印象ですが、その際、Yのように、実効性のある時季変更権のルールまで定めていない場合が多いようです。
 良かれと思って有給を多く与えることにしても、有給の取得で揉める事態まで想定したルールを定めておくことが重要です。

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※ JILA・社労士の研究会(東京、大阪)で、毎月1回、労働判例を読み込んでいます。

※ この連載が、書籍になりました!しかも、『労働判例』の出版元から!



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