経営組織論と『経営の技法』#316
CHAPTER 12.3.1:組織における3つの変革 ③人材の変革
しかし、このような変革を起こすためには、そこで働く人の意識や考え方、態度、行動を変えていくことも必要になります。これが人材の変革になります。日々改善するためには、そこで働く人が常に新しいやり方を試みたり、より良いやり方や手順を模索するような意識や具体的な行動が必要になります。
もし、ルールを守ることが大事である、これまでのやり方を守るということが大事だと考えていれば、このような改善は起こりません。積極的に改善を行うためには、意識や考え方のレベルから変えていく必要があります。このような人材の変革には、業績評価のあり方や報酬制度の変更、あるいは研修や教育といったことによってなされることが多くあります。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』275頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018)】
この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。
1.内部統制(下の正三角形)の問題
人事的に見ると、社員に意欲が満ちているから変革が進むのは当然ですが、変革を任せることがさらにその意欲を高める面もあります。仕事に手応えがあることはやりがいを与えるからです。
逆に言うと、従業員の意欲が高まることを待ってから変革に着手するのではなく、変革しながら従業員の意欲を高め、変革の深度やスピードを高めていく方法があるのです。
2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
投資家である株主から投資対象である経営者を見た場合、その資質として特に重要なのはやはりリーダーシップであり、従業員の気持ちを掌握する能力です。それがあるからこそ、従業員の教育や意識改革も可能になります。組織(#314)やプロセス(#315)の変革が小手先のものに終わらず、従業員たちがそこに肉付けしてくれるためにも、経営者にはリーダーシップが必要です。
3.おわりに
とは言うものの、実際に人材を変革すると言っても、大の大人がその人格をその根本から改めることなどできません。限界も知ったうえで、まずは意欲を引き出すところから始めるべきでしょう。
※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。