経営組織論と『経営の技法』#309
CHAPTER 12.2:組織のライフサイクル ⑦共同体段階の意味
共同体段階での危機を超え、組織の規模がさらに大きくなると公式化段階になります。公式化段階では、組織はルールや手順、コントロールの仕組みなどを導入し、マネジメントを行います。そのため、インフォーマルなコミュニケーションは減少し、公式的な情報伝達を中心として組織は動いていきます。
また、技術者や人事スタッフ、経理の専門家などの専門能力を持ったスタッフが組織に入る場合もあります。この段階では、トップ層は、事業戦略などの長期的な課題に携わるようになり、実際の業務運営はミドル層以下によってなされることになります。まさに組織が組織らしくなっていく段階です。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』272~273頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018)】
この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。
1.内部統制(下の正三角形)の問題
進化するにつれ、内部組織が分化していく様子がよくわかります。
労働法的に見ると、スペシャリストを職種限定で雇用するか、ジェネラリストを育てるために、人事異動や業務内容の変更等の人事権を行使して様々な仕事を経験させるか、という人事政策上の選択が必要になってきます。
2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
投資家である株主から投資対象である経営者を見た場合、長期的な課題に対応する能力が必要になってきます。さらに、単に競争市場での競争に長けているだけでなく、組織運営にもたけている必要が出てきます。
組織の進化につれて、経営者に求められる資質も高度化します。経営判断をする役員も、役員会や経営委員会のようにチームを組むようになっていきます。
さらに、株主からのチェックの問題、すなわちガバナンスの問題も高度化していきますので、公認会計士をはじめ専門家が関与するようになり、社外取締役や社外監査役などの外部のチェックも入るようになるなど、ガバナンス体制も高度化していきます。
3.おわりに
だんだんと組織が「重く」なっていき、意思決定が慎重になっていきますが、これは仕事の規模や取るリスクが大きくなっていくからです。経営判断の原則が働くために、十分な情報で十分な検討を行おうとすれば、自ずと意思決定に関わる人数が増え、手間もかかるようになるのです。
※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。