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経営組織論と『経営の技法』#289

CHAPTER 11.2.3:構造的空隙を作る ④空隙
 これを別の見方で考えると、自分がネットワークを抜けても、あまりネットワークの構造が変わらないかどうか、自分が抜けた場合に、誰とも関係がなくなってしまう参加者がいないかどうか、と見ることもできます。この違いをネットワークの図で示すと、図11-3のようになります。

図11-3

 ネットワーク図のAでは、空隙が少なく重複性の多いネットワークになります。つまり、自分と同様の相手と関係を持つ参加者があり、自分以外の組織もそれぞれつながっている状態です。このようなネットワークでは重複が多くなります。先の節で触れた高密度のネットワークはこのような構造になりがちです。
 一方で、Bのネットワーク図は、空隙が多く重複性が少ないネットワークです。Aとは反対に、自分が中心になってネットワークが構成されているのがわかります。また、自分と関係を持つ組織の間の関係も少なく、自分が他の組織との間を取り持つ位置にいることがわかります。もし、自分がこのネットワークから抜けると、このネットワークの中のいくつかの関係は成立しなくなることがわかります。これが空隙が多いネットワークの特徴です。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』260頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 会社組織内の場合、もちろんプロジェクトごとなど個別に決まる部分もありますが、多くの場合は部門ごとに部門長とメンバーがいて、役割に応じたコミュニケーションの形が出来上がっています。各部門チームで動き、メンバーが抜けても誰かが代わりを務めますから、正式な業務上の関係性を考えると、空隙が少ないということになりそうです。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 会社外の関係こそ、上記本文の内容になります。
 会社としては、空隙のあるBの方が存在感を発揮でき、主導権を取りやすいということになるでしょう。

3.おわりに
 「空隙」という概念が興味深いです。「密度が薄い」という言い方でなく「空隙」という言葉が用いられるのは、何か伝えたいイメージがあるように思いますが、機会があればその点を少し調べてみたいと思いました。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


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