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経営組織論と『経営の技法』#294

CHAPTER 11.3.2:ネットワーク型組織の3つのタイプ
②小企業ネットワーク その1

 小企業同士が連携し、大企業に対抗する力を持つこともあります。それが小企業によるネットワークです。家具や陶器など地域の伝統産業では、それぞれの職人は独立していますが、連携して製品を作成するネットワークを形成していることがあります。これも1つの小企業ネットワークの姿といえます。
 このような小企業のネットワークの利点は、次の3つになります。
 1つは、相互に信頼が生まれることです。ただし、ネットワーク型組織に信頼が生まれるにはいくつかの条件が必要になります。①市場や技術、賃金率、収益に関する情報が共有されること、②一方的ではなく相互に助け合う経験があること、③関係が長期的であること、④それぞれの組織が規模や力関係、戦略的な位置についていること、⑤収益の増加や成功を集合的に経験していること、⑥業界団体や組合などによって生み出される運命共同体としての意識が存在することです。信頼があることで、お互い助け合ったり、共通の目的を持って協働することが可能になり、1つ1つの組織は小さくとも大きな組織と同等の力を生み出すことができるようになります。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』263~264頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 同業会社の集まりもあれば、異業種の集まりもあるでしょう。下町の工場が集まってボブスレーを作ったという話も有名です。これを構成する会社1つ1つの内部組織ではなく、このような集まり自体を「組織」として見立てた場合、この「組織」を1つにまとめ上げるものは、契約でも人事権でもなく、もっと不確かなものです。そのための条件が、上記本文では①~⑥の条件として示されています。
 これを見ると、前回#293で検討したような大企業と小企業の間の関係と異なり、より対等な関係であることから経済的な強制力が働きません。より主体的な理由でこの「組織」に帰属することが各構成員に求められますから、仲間として一緒にやっていこうという意識を共有できることが必要であることが分かります。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 投資家である株主から投資対象である経営者を見た場合、このような心強い仲間を作り、会社の活躍の場を広げることも、経営者にとって必要な能力です。単に会社組織の中でトップとして決断や指示をするだけでなく、会社の外では社交的で積極的な活動が求められるのです。

3.おわりに
 上記本文の示す条件を見ると、異業種の集まりの場合だけでなく、同業者の集まりの場合も「組織」化可能であることが分かりますが、談合など違法な活動にならないよう注意が必要です。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


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