【プロファイリング】リバプール方式
リバプール方式の提唱者-FBI方式との違い-
サリー大学の心理学者デヴッド・カンター氏が提唱した犯罪データの統計を分析し作成される「リバプール方式」というプロファイリングは、「FBI方式」とは異なる。
FBI方式は、捜査員の経験や勘を参考にし、犯人や犯行現場をカテゴリー分けし、作成されるもの。
ロンドンで起こった凶悪事件
1982年にハムステッド・ヒースの駅での女性暴行事件から始まり、類似事件は40件以上に登った。
1985年には遂に女性が殺害されてしまった。
警察は捜査にあたったが、犯人を挙げられずにいた。
リバプール方式-円仮説-
そこで、警察は、デヴィッド・カンターに捜査協力を依頼した。
デヴィッド・カンターは「円仮説」を唱えた。
青は最初の3件が起こったエリア、赤丸は
犯行現場を囲ったもの、白線は最も離れた犯行現場2点を結んだもの。
その丁度真ん中のエリアに犯人の居住地があるという仮説を立てた。
なぜかというと、日常生活でも、基本的に人間は行動範囲が円の中に集中するものだからである。
例えば、通勤、買い物、バーやジムなどへのお出かけは、通勤場所が離れている場合でも通勤場所に近いか、通常、自宅に近いかでほぼ決められている。
リバプール方式-プロファイリング-
次にカンターは犯行手口の共通項を導き出した。
・犯行は全て夜に実行されている
・犯行現場は鉄道駅近くである
・被害者は10代女性が中心である
・紐で被害者を縛り、猿轡をした上で暴行
・被害者の体を吹いたティッシュは必ず燃やす
・一部の被害者に名前を聞いたり、帰り道を教えていた
それに伴い、カンターはプロファイリングを実施した。
・最初は土地勘のある自宅近くで犯行
・そのうち自宅から離れた場所で犯行
・犯人は結婚はしているが子供はいない
・妻にDVをしており夫婦関係が破綻
・年齢は20代後半で熟練を必要とする仕事に就いている
・気性が荒く暴力を伴う犯罪歴がある
犯人の素顔
ジョン・ダフィ(当時24)
職業:鉄道会社の大工
住居:事件現場近く
前科:妻に対する暴力
容疑者リスト下位に挙がっていた
カンターのプロファイリング17の特徴のうち13が合致した。
犯人は小柄→162cm
魅力的な外見ではない→ニキビだらけ
格闘技に興味がある→格闘技のジムに通っていた
犯行の記念品を持ち帰っている→被害者の宅の鍵33個を自宅に保管
警察は当初より共犯がいると踏んでいた。
共犯者
ディヴィッド・マルカイ(当時23)
・ダフィの幼馴染
・学生時代いじめられていた
・13歳の時ハリネズミを虐待した
英国外の事件で用いられたリバプール方式
日本の連続放火事件では、約7割の犯人が、オーストラリアで発生した連続放火事件、連続暴行事件では約9割が円仮説に該当した。
【参照】心理学者カンターが携わった事件についての本
通勤型・拠点型の違い
・復讐や利益のための放火=通勤型
円仮説が該当しない場合が出てくる
・欲求を満たすための放火=拠点型
円仮説の中に犯人の拠点がある
日本の事件におけるリンク分析
・リンク分析
複数の類似事件が発生した場合に行う分析
蓄積した過去の犯罪データを活用し、a)事件を起こした犯人が同一犯か、b)犯行後の犯人がどう行動するかを予測するもの
【実例】ルネサンス佐世保散弾銃乱射事件
犯人が散弾銃を11発発砲
男女2名の命を奪い、6名に重軽傷者を負わせた
現場から犯人は逃走
地元住民らは、第二の犯行が起こることを危惧していたが、日本の心理学者は同様の大量殺傷事件79事例を調べた。
すると、この犯行形態の犯人は事件後、更なる事件を起こすことは少なく、自ら命を絶つケースが多いことが分かった。
実際に犯人は自殺し、教会の敷地に倒れているところを発見された。
逃走する八田與一とプロファイリング
大分県別府市で大学生に車で後ろから追突し命を奪い、2年間逃走している八田與一
愛知県名古屋市で空き巣に入った犯人が八田與一と似ているとSNSの情報網を駆け巡った。
刑事もそっくりと言うくらいだから、恐らく本人だろう。
重要指名手配犯のため、警察は「FBI方式」「リバプール方式」を駆使して、調査をしていると思われる。
名古屋の空き巣が八田の場合、利益のための犯行であるため、円仮説では考えにくく、なお逃走を続けていることから、様々な犯罪データにも中々合致点を見つけられていないのかもしれない。
これだけ特徴が出回っているのに、中々捕まらないところを見ると拠点を素早く移動させてる可能性も考える必要があるかもしれない。
大分から名古屋まで逃走したとすれば、協力者がいるのか、それとも、空き巣や窃盗、置き引きを重ねて逃げ延びているのか。
八田與一を知らない国民もいると思われるため、これら情報を共有し、追い詰めたいものである。
©2018 Yuyu#6
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