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拾う女神あれば、落とす不届き者あり。

昨日の夕方のこと。近所で買い物するついでに、犬と一緒に公園にいこうと家を出ました。

まずは薬局で買い物をして、近くの公園へ。届いたばかりのハーネスとリードを着用させ、初散歩の様子を撮ろうとポケットに手を入れると、

スマホがない。

慌てて周りを探すも、やっぱりない。
一瞬で、「やらかしてしまった」と血の気が引きました。

私はスマホのケースに、クレジットカードも入れています。
スマホを無くすということは、カードも無くすということ。
そして、ニュースでも自分の肌でも感じている通り、この街の治安はよろしくありません。


すぐに「薬局を確認してくる」と夫に告げ、返事も待たず、先ほどの薬局に走りました。

この時点では、薬局のレジに置き忘れた、と考えていました。
が、薬局に戻り、会計をしてくれた男性スタッフに聞いてみたところ、「スマホ?預かってないよ」といつもの笑顔で返されてしまった。


もしかして、誰かに持っていかれた・・・!?


目の前が真っ暗になり、その場から動けない。そんな私を見かねたのか、隣のレジに立つ女性のスタッフが「こっちにおいで」と声を掛けてくれました。

「カバンやポケットの中は確認した?」「道には無かった?」と、一緒に状況を整理してくれました。質問の合間に「落ち着いて」「息を深く吸って」と何度も言ってくれ、更に店の中を一緒に歩いて確認してくれました。でも、やっぱり見つからない。

これは、やばい。一刻も早く、クレジットカード会社に連絡したほうがいい。

そう考えていた矢先、公園にいた夫が薬局に駆けこんできました。

右手には3キロの子犬が入ったキャリーバッグ、左手には水やらドクターペッパーやらが入った薬局の紙袋(液体だけで約6リットル)。今振り返ると、腕力がすごい。

その腕力がすごい夫から、びっくりする話が飛び出しました。
いわく、「女神から電話があった」と。


◇◇◇◇◇◇


薬局に走っていく妻の後ろ姿を見ながら、公園に残された夫は「ひとりで行かせて大丈夫だったかな…」と心配していたそうです。ただ、子犬もいるし、6リットルの液体もある。その場で紛失手続きを考えていたらしい。

そこに、夫のスマホに一本の電話が。発信元は、なんと私のスマホ。

慌てて電話を取ると、「このスマホを拾ったので、近くの駐車場に預けておくわね」という見知らぬ女性からの電話だったそうです。

夫は妻にこのことを伝えるべく、10キロ近い荷物を両手に抱え、薬局に走ってきたのでした。

◇◇◇◇◇◇

この話を聞き終えるや否や、とりあえず走ってその駐車場へ。初めて入る地下駐車場だったので、道が分からずバタバタする私に、「あっちに事務所があるっぽい」と夫が後ろから冷静な言葉を掛けてくれました。

その後、事務所の前で車を捌いている男性を発見。ハリポタのバーノンおじさんに似た大柄なその人に「誰かが、私のスマホを、届けてくれたんです・・!」と急き切って言うと、「ああ」という顔で、のっしのっしと事務所に入り、何かを手に取りのっしのっしと再び現れました。

バーノンおじさんの手には、見慣れたスマホケース。ああああああわたしのスマホ!!!!

慌てて中身を確認すると、スマホ本体は勿論、クレジットカード類もすべて無事。

ひやーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!

一瞬で体の力が抜けて、いつもの世界が戻ってきました。

届けて電話をしてくれた見知らぬ誰か、いや、女神さま!あなたのおかげです、ほんとうにありがとう、とスマホを握りしめて取り敢えず念を飛ばしておきました。


海外で落とし物・忘れ物をしたら、戻ってこないと思ったほうがいい。

そんな中、今回はラッキーが重なりました。

まず、落とした時、私のスマホにはロックが掛かっていなかったこと。
もしロックが掛かっていたら、女神は夫に電話を掛けることはできませんでした。拾われて近くの店や駐車場に届けられたとしても、私が手にするまでもっと時間が掛かったはずです。

次に、女神が夫に電話を掛けてくれたこと。
「履歴の一番上にあった番号に掛けた」と言っていたそうですが、漢字で登録された夫の名前を迷わずタップしてくれたことに、ほんとうに感謝しました。

そして、今更ながら気付いたことも。
ニューヨークには交番がない。海外で落とし物は戻ってこないとよく聞きますが、落とし物を拾っても、気軽に預けられる先がない国もあるんですね。拾われて届けられる場合、近くのお店や施設に預けられる可能性が高いことも知りました。


感謝すべきは、拾ってくれた女神さまの他にも。

剛腕の夫、ガタガタ揺れるバッグの中で大人しくしていてくれた子犬、それから薬局の女性の店員さん。レジ業務を離れてまで、私の話を聞き一緒に探し回ってくれました。

NYで暮らしていると、店員と客がレジで談笑していて列が進まないのは、よくある光景です。「店員であっても、客を捌くことより、目の前の人との会話を大切にするんだなぁ」と思っていました。

あの時の薬局の女性スタッフは「店員だから」という理由より、目の前にいる私を心配する気持ちで、親身に動いてくれたのかもしれないな。今度、薬局に行く時には、もう一人の女神・あの店員さんにも「この前はありがとう、無事に見つかったよ」と伝えようと思います。

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