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秋だ! 読書だ! キノコの本だ! 懐かしい少し前のキノコの本の紹介
秋ですね。
キノコ好きは、読書どころではないかも知れませんが、
この機会に、私のお気に入りの、
少し前の、キノコの本を紹介させていただきます。
キノコ好きの方は、
忙しいシーズンが終わってから、
ご覧いただければと思います。
「少し前」という設定にしたのは、
現在、新刊で手に入る書籍に関しての紹介や書評はいくらでもあること、
私自身が最新のものから遠ざかっていたこと、
などから、私にできることといえば、
目にすることが少ないであろうと思われる書籍、
古書でとなりますが入手が容易で、図書館などでも閲覧が容易、
と思われるものを紹介することを考えたからです。
世の中の移り変わりが激しく、分類体系の変更など、新しい知見がどんどん出てくるため、ロングセラーとなるものが少なく、せっかくいい本なのに、忘れられてしまっている。
そのような本を、紹介してみたいと思います。
1.「しあわせなキノコ」
最近、別の意味で有名になっている、伊沢正名さんの写真集。
キノコの写真といえば、伊沢さんと、一時代を築いた方です。
色・形、光の素晴らしさは、もちろんですが、
寮美千子さんのキャプションが素晴らしい。
徹頭徹尾、メルヘンなのです。
撮り下ろしではありませんが、他の図鑑などで使われている写真もあり、
その点、特徴を捉えていて、70種前後だとは思いますが、
手持ちの図鑑の補助写真にもなり得ると思います。
植物関係の図鑑は、
図版によるもので、種の特徴を確認し
写真によるもので、周辺環境の様子を確認する。
というのが望ましい、と考えているので、
写真集でも和名・学名はキチンと押さえてあるこの本は、
写真図鑑をお持ちでない方にもお勧めです。
ただし、写真解説もしっかりメルヘンです。
キノコ調べに疲れた時に、ただ、ただ楽しむためのキノコの本。
キノコといえば、すぐ食毒を気にする、という風潮は、
食べ物にあふれている現代で、
また、もともと食には適さない大きさのものも多い中、
そろそろ終わりにしてもよいかと考えています。
キノコの造化の妙を純粋に楽しむ、というのもあっていいと思います。
森の宝物、キノコは色も形も不思議です。はっきり言ってヘンです。
でも、よく見ていると、どれもこれも、しっかりと根を生やし、誰れ
にも媚びずに、堂々と存在しています。こんなキノコが生きてい
るなら、私も生きていける。しあわせなキノコは、私の鏡です。
帯より。
2.「きのこの100不思議」
ほんの少しだけ、かすった程度、お手伝いさせていただいた本。
わりと評判がよく、頼んでもいないのに、新聞に書評が載り、読者プレゼントまでしていました。
「世界最大の生物」が目新しかったようで、一部では話題になりました。今でいうバズッたという状態。
よく日本のキノコは三分の一程度しか名前が付いていない、といわれます。
これは、圧倒的に新種記載に従事できる専門家が少ない、ということなのです。
世界中の近縁種に同一のものがないか調べ、どこが特徴的なのか、分布や変化など顕微鏡的な資料まで含め、膨大な調査をし、基準標本を管理する。
菌類や昆虫などは種類数が多く、作業量に比べて、哺乳類や高等植物のように話題になることもほとんどありません。
初期の東京大学の動物学の教授、丘浅次郎が
「隣の植物学の連中は、新種記載ぐらいで自慢のたねにしている。だいたい、種名もなくて次の段階の研究ができるか。」
といった趣旨の文章を残しています。
牧野富太郎も同じ考えだからこそ、何も気にしないで、
日本人初の「ヤマトグサ」の新種記載を行ないました。
私は、それ故に嫉妬を買い、出入り禁止になったのだと思っています。
私はこれを「ヤマトグサ事件」と呼びたい。
少し話がそれましたが、キノコはまさにこの状態。
グラフを書くのに目盛りも決まっていない、というのに近いのです。
この本は、
地道に黙々と研究をされている研究者の皆さんを応援して、
見開き2ページという分量であまり負担をかけることなく、
ご自分の研究の一端を紹介していただき、
おいしいものでも食べていただこう、
といった趣旨の一連の企画の一つなのです。
菌類に限らず、研究者の皆さんは、
雲の上の仕事をしている訳ではないのです。
名前のあるキノコを増やしてもらうために、一般の人々の理解を深め、
菌類研究者の皆さんが研究の傍ら余裕をもって新種記載にも従事できるよう、キノコ愛好者はもっともっと研究者の皆さんを応援して行きましょう。
最後は堅苦しい話になってしまったかな。
以上の書籍はネットなど、今のうちは安価で入手できます。
ご興味を持っていただければ幸いです。
有難うございました。
(追記)
「100不思議シリーズ」は現在無料で公開されていました。
確認不足ですみません。
「日本森林技術協会」→「デジタル図書館」→「100不思議シリーズ」
http://www.jafta-library.com/100hushigi/index.html
pdfでよろしければこちらをどうぞ。
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