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身分を隠して

 往年のテレビドラマ『水戸黄門』では、「黄門様」こと水戸光圀が身分を隠して諸国を旅するという設定になっている。

 身分を隠す理由の一つは、庶民の実情を知るためだろう。身分を明かさずに旅をすることで、庶民の本当の生活や苦しみを直接見ることができると考えたに違いない。

 理由の二つ目は、公平な裁きを行うためだと思われる。もしも、光圀が水戸藩の重臣であることを明かせば、人々は過剰に敬意を払ったり、逆に警戒して本音を話さなかったりする可能性がある。

 身分を隠しているからこそ、公平な目で物事を判断し、悪事を暴くことができるのだ。

 このほかに、旅の安全を確保するという理由があったのかもしれない。身分の高い人物が旅をすれば、多くの随行者を伴い、目立ってしまう。

 これでは自由に行動することが難しくなるし、敵対する勢力に狙われる危険もある。身分を隠して少人数で旅をすることで、安全かつ自由に動けるようにしていたのではないだろうか。


 ・・・ときどき、文部科学省などの大臣が学校を視察することがある。

 こうした視察に際しては、事前に対象となる学校の厳格な選考があるはずだ。その後も入念な調整を経て、当日は厳重な警備体制のもとで視察が行われるのであろう。

 しかし、黄門様の例にならうと、これでは実情を知ることが難しいのだ。

 たまには黄門様よろしく、「孫の様子を参観に来ました」とでも偽り、身分を隠して視察をすることも一考である。

 もしかすると「くそじじい」とか「くそばばあ」とか言われるかもしれないが、それはそれでその学校の実態なのだ。

 また、身分を隠して少人数で行動すれば、SPの皆さんへの負担軽減にもなるだろう。

 ・・・そして、最後に「印籠」のような物を出すことはせず、そのまま立ち去ればよろしい。

 そういう視察のほうが、きっと施策の立案には役立つはずである。

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