「教育学部」はどこへ行く?
この1週間の間に、国立大学の教育学部(教員養成学部)のことが続けてニュースになった。
まずは、山形大学で約20年ぶりに教育学部が復活するというニュースである。
山形大学では、2005年度に旧教育学部を地域教育文化学部へ改組し、地域教育文化学科の中に児童教育コースと文化創生コースを設けている。
このうちの児童教育コースでは小学校教諭一種免許状の取得が卒業の必須条件となっているが、スポーツ、心理、音楽、美術などを学ぶ文化創生コースでは教員免許の取得が必須とはなっていない。
しかし、昨今の教員不足は大学の地元・山形県でも例外ではない。そんな状況を背景に、同大学では2026年度に地域教育文化学部を教育学部に改組するという方針を発表したのだ。
現在の地域教育文化学部では児童教育コースが75人、文化創生コースが90人の定員だが、新生の教育学部では学校教育教員養成課程が120人、地域教育共創課程(仮称)が45人の定員となる予定だ。
一方、同じ東日本にある埼玉大学では、2026年度より教育学部の学校教育教員養成課程を再編し、入学定員を380名から320名へと60名減らすことを発表した。
国立の教員養成大学・学部の教員就職率は、2023年3月末の卒業者全体で67.8%となっているが、埼玉大学では52.6%という低い水準に留まっている。
文部科学省では、教員就職率の低い国立大学の教員養成大学・学部に対して再三の改善要求をしている。それもあって、同大学が「少数精鋭」を図ったと見ることができるだろう。
また、現在の国立大学の場合、大学全体での定数増には国からの厳しい制限があるが、学部や学科間での定員調整については認められやすい。
今回、埼玉大学では教育学部の入学定員を60名減少する代わりに、工学部に20名分の「女子学生入学枠」を設けるとともに、教養学部教養学科に入学定員40名の共生構想専修課程(仮称)を新設するという。
こうした定員の「使い途」は、総合大学としての経営戦略に基づく判断なのだろう。
どちらの教育学部も、新しい課程に新入生を迎えるのは1年5か月後、卒業生を出すのはその4年後のことだ。
そのころに教員不足の問題が、そして大学を取り巻く環境がどうなっているのか、それは誰にもわからないのである。