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不毛な「二項対立」
11月26日付で公開された立教大学・中原淳教授のブログのタイトルは、
「人事界隈」にあふれる二項対立図式の議論は、たいてい「不毛」!?
であった。
その内容は、企業等の人事にまつわる、
ひとは「育つ」のか、「育てる」のか?
マネジメントではなく、リーダーシップが必要だ
といった二項対立を諌めるものである。なぜなら、こうした二項対立は不毛であり、生産性にも乏しいからだ。
内容の詳細については中原教授のブログをお読みいただきたいが、平たく言ってしまえば、
「ひとは『育つ』ときもあるし『育てる』ときもある」
「マネジメントとリーダーシップは、どちらも大事」
ということになるだろう。
「育つ」と「育てる」にしろ、マネジメントとリーダーシップにしろ、それぞれは対立の関係にあるわけではなく、補完関係にあるのだから。
残念ながら、学校教育の世界は二項対立で溢れている。
「基礎基本」か「活用」か
「自由」か「規律」か
「個」か「集団」か
「デジタル」か「アナログ」か
といった具合である。
無論、
「どちらが大事か」ではなく、
「どちらも大事」なのだ。
社会一般での二項対立に目を向けると、
「オールドメディア」対「SNS」
というのが最近のトレンドなのかもしれない。
たしかに、近年の新聞、テレビ、ラジオなどの伝統的なメディアには、批判されるだけの理由があるといえるだろう。
たとえば、特定の政治的な勢力や企業などに忖度をした報道が、少なくとも一部のメディアで行われていることは事実だろう。
さらに言えば、伝統的なメディア自体が「権威」となって、バイアスがかかった情報を発信しているという点も否定できない。
また、SNSという新しいメディアに比べて、ニュースの配信速度が遅いということも批判を浴びている。速さが求められる現代社会において、リアルタイムで情報を提供できないところは大きな弱みだ。
さらに、伝統的なメディアの場合には基本的に一方向の情報発信が中心だが、SNSでは即時的に双方向のコミュニケーションを図ることが可能である、という点も見逃せないだろう。
・・・しかし、だからといって「オールドメディアはもうダメだ」と決めつけてしまうのは、あまりにも短絡的だろう。
SNSの長所である即時性は、真偽が不明な情報や悪意に満ちた情報を検証のないまま蔓延させることにつながっている。
そして、その双方向性が悪意や敵意を増幅させ、対立を煽っているのだ。
言うまでもなく、従来からのメディアと新しいメディアについては、
「どちらが大事か」ではなく、
「どちらも大事」なのである。