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【続】教員の「残業代」が3倍になるわけではありません
昨日(8月22日付)、次のような内容の記事を書いた。
『読売新聞』など一部のマスコミで、
「教員の『残業代』が3倍に増額される」
と報じられたが、それは事実ではない。
実際に増額されるのは、残業代の代わりに教員に対して一律支給されている「教職調整額」であり、それを基本給の4%から13%に引き上げる方針を文部科学省が打ち出したということなのだ。
ちなみに、支給額が引き上げられるといっても、本来支払われるべき残業代に比べるとその額は格段に少ない。
・・・昨日の記事を読んだ方から、X(Twitter)やFacebookなどを通じて様々なコメントをいただいた。
特に多かったのは、
「この施策が、教員にとって『逆風』になるのではないか」
という内容のものである。
たとえば、東京都の初任者を例に試算をすると、教職調整額が基本給の4%から13%に引き上げられた場合、月々の手取り額は約2万4千円増えることになる。
本当は受け取れるはずの残業代には大きく及ばないとはいえ、けっして小さな額ではない。
これによって、
「多くのお金が貰えるようになるのだから、先生たちはもっと働くべきだ」
という風潮が生まれ、文字通りの「定額働かせ放題」になってしまうのではないかと懸念する関係者は多い。
また、
「こういう報道の仕方は、まるで教員に『残業代』が支払われていて、それが大幅に増額されるかのような『誤解』を意図的に招こうとしているのではないか」
という、マスコミに対する憤りの声も多かった。
たしかに、「残業代」「3倍」という見出しだけを見て、
「教員は恵まれている」
「残業代がたくさん出るのなら、もっと働いてもらわなければ」
と感じた保護者や市民の方は多いはずだ。
まさに、ミスリードである。
・・・ミスリードといえば、今回の報道によって、3か月前の「文部科学省・初等中等教育局長名での抗議文」の一件を思い出したという方も少なくないようである。ちなみに、その一件の顛末は次のとおりだ。
公立学校教員の長時間労働の是正や給与制度の改正などについて議論してきた中央教育審議会の特別部会が、5月13日に具体案を盛り込んだ「審議のまとめ」を了承した。
当日、報道各社がこのニュースを報じたが、その中でNHKは、給特法に基づく教職調整額の仕組みを「定額働かせ放題」と呼んだ。
報道から4日後の5月17日になって、文部科学省がNHKに対して初等中等教育局長名で”抗議文”を送るという異例の事態になった。
こうした文部科学省の対応に対しては、
・行政府が安易にメディアを批判するべきではない
・”定額働かせ放題”という言葉は、現在の教員の働き方を端的に表現したものである
という批判が集まった。
昨日からのコメントの内容も、
「『定額働かせ放題』という表現が『誤解を招く』として抗議をしたのであれば、今回の『残業代』についても抗議をしないと、文部科学省の対応として整合性がとれない」
「いや、このミスリードに関しては文部科学省の思惑どおりだから、きっと何も言わないだろう」
と、2通りに分かれている。
文部科学省の今後の対応に注目をしたい。