「夏休みの廃止・短縮」に反対!!
このところ「夏休みの廃止・短縮」のことが話題になっている。
話題の発端となったのは、認定NPO法人「キッズドア」が、今年5月下旬から6月上旬に「小中学生のいる困窮世帯」を対象として実施したアンケート調査の結果である(回答数1,821件)。
2024夏 子育て家庭アンケートレポート(概要)
調査結果によると、夏休みに関しては、
「なくて良い」が13%、
「短い方が良い」は47%
と、合わせて6割が「廃止や短縮」を求めている。また、その理由は下のグラフのとおりである。
回答者たちの「願い」を要約すると、次のようになるだろう。
いずれも切実な内容であり、その改善を図っていく必要がある。
しかし、「夏休みの廃止・短縮」だけがその改善策ではないはずだ。むしろ、国や地方自治体の福祉部門・機関が中心となって、食事の提供を含めた「子どもの居場所」の確保や「体験格差」の解消に努めていくべきだろう。
要するに、これは福祉の領域の問題なのだ。
そもそも、「体験格差」の解消を「夏休みの廃止・短縮」によって図ろうとするのは妙である。
「どの子も夏休み中に充実した体験ができるようにしましょう」
ということならばともかく、
「体験ができない家庭に合わせましょう」
というのでは、あまりにも非生産的だろう。
これでは、
「小学校の運動会で徒競走の着順をつけずに、最後は速い子も遅い子も横に並んで手をつなぎ、みんなで一緒にゴールをしましょう」
という発想と同じである。
また、近年の真夏の酷暑を考えれば、「夏休みの廃止・短縮」によって7・8月中に子どもたちを毎日登校させることは無謀だとしか言いようがない。たとえ教室にはエアコンが入っているとしても、特別教室や体育館等には未整備な学校が多い。登下校時を含めて熱中症の危険が常につきまとい、とても学習に集中できる環境だとは思えない。
それでも、
「とりあえず、子どもを預かってくれて、給食を提供してくれればいい」
という保護者はいることだろう。保護者だけでなく、学校を「教育の場」というよりも「福祉の場」だと考えている人たちが一定数いるのである。
無論、児童虐待や貧困などの問題に対して、学校は福祉機関と連携をしながらその解決や改善を図っていく必要がある。だが、その主体はあくまでも福祉機関のほうであって学校ではない。学校は第一義的に「教育の場」であって「福祉の場」ではないのだ。
万が一、一部の極端な声に押されて「夏休みの廃止・短縮」を認めてしまったら、次には、
「土・日・祝日にも学校で子どもを預かって給食を提供してほしい」
という声が上がってくるに違いない。
くり返しになるが、
学校は「教育の場」であって
「福祉の場」ではない
のである。
国や自治体の教育行政関係者、そして首長の皆さんには、この問題の本質をよく見極めていただきたい。そして、短絡的な判断は謹んでいただきたい。
【追記】
こうした福祉の問題とは別の視点から、文部科学省は「夏休みの短縮」を検討している。このことについては、次回の記事で取り上げたい。
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