『失敗の本質』〜急いで口で吸え!〜
給特法に基づく教職調整額の在り方などについて審議する中教審の特別部会(第12回)が4月19日に開催された。その結果、
「給特法の教職調整額を少なくとも10%以上とする」
という方向で決着をすることが濃厚になっている。
しかし、これは「教師の長時間労働の是正」を抜本的に図るための方策にはなり得ず、むしろ「定額働かせ放題」と揶揄される働き方を定着させることになってしまう可能性が高い。
人材開発や組織開発が専門である立教大学の中原淳教授は、この教職調整額の引き上げ案について「手段と目的が整合的ではない」と批判をしている。5月7日付の『教育新聞』における妹尾昌俊氏との対談のなかでも、次のように語っていた。
中原教授が紹介をしているように、この『失敗の本質』は第二次世界大戦における日本軍の行動を組織としての失敗としてとらえ直し、それを現代の組織にとっての教訓や反面教師として活かすことをねらいとして出版されたものだ。
・・・敗戦から80年近くが経過しても、それが教訓や反面教師として十分に活かされていないという現実があるのは残念である。
1981年に小林克也や伊武雅刀らのユニットである「スネークマンショー」が発表した同名のアルバムには、「急いで口で吸え!」というタイトルのラジオドラマが収録されていた。それは、次のような内容だったと記憶している。
本当に必要な情報は何一つ与えられず、突撃させられる兵士たちの悲哀を描いたブラック・コメディである。しかし、第二次世界大戦末期の日本軍でこれに近い状況があったことは、『失敗の本質』でも明らかにされているとおりだ。
「教員の長時間労働の是正」に向けた対策も、今のままだとこの「急いで口で吸え!」と五十歩百歩になりかねないだろう。