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「いじめの認知件数」とは?

 文部科学省の調査によると、2023年度の小・中学校、高等学校、特別支援学校での「いじめの認知件数」は73万2568件、「いじめの重大事態」の発生件数は1306件と、いずれも過去最多となった。

 この調査結果を受けて、こども家庭庁などは「いじめの防止」や「早期発見」「いじめへの対処」など4つのジャンルで、8項目の強化策を取りまとめている。

 強化策には、子どもの視点に立った相談体制の充実や重大事態の調査報告書を分析する専門家会議を新たに設置することなどが盛り込まれており、学校に示していじめの未然防止に活用させる方針だという。


 こうした報道によって、
「いじめの件数が過去最多?!」
「学校は何をやっているんだ!」
 と感じる方も少なくないだろう。

 しかし、
「いじめの件数」と
「いじめの認知件数」
 とは別物である。今年度の結果である73万2568件以外にも、「認知されなかったいじめ」は数多くあったに違いない。

 その一方で、学校、保護者、地域社会、教育委員会等がいじめに対して敏感になり、以前なら見過ごされていたような事例や、初期段階のものが早期に発見されて、認知件数に計上されていることは間違いないだろう。

 文部科学省や教育委員会も、
「『いじめの認知件数』は、学校がいじめに対して向き合った回数」
 であるということを学校関係者に繰り返して周知をしている。

 それによって担任による抱え込みや学校ぐるみの隠蔽が防がれ、いじめの「見える化」が進んできた結果が今回の数値だともいえるのだ。

 実際に、調査結果の報告のなかで文部科学省の担当者は次のようにコメントをしている。

「増加の背景として、いじめ防止対策推進法におけるいじめの定義やいじめの積極的な認知に対する理解が広がったことや、アンケートや教育相談の充実などによる児童生徒に対する見取りの精緻化、SNS等のネット上のいじめの積極的な認知が進んだことなどが考えられる。」

 たしかに、70万件を超えるという「いじめの認知件数」は衝撃的である。しかし、いじめの「見える化」が進むことで、被害者への迅速なサポートや加害者への指導が可能となり、問題の長期化や深刻化を防ぐことにつながった事例も増えているはずだ。


 ・・・こども家庭庁は、少子化対策や子育て支援の充実を目指し、2023年4月に設置された。従来、子どもや家庭に関する政策は厚生労働省や文部科学省など複数の省庁が担当しており、その連携不足が課題となっていたことが設置の背景にある。

 そのため、こども家庭庁には子どもや家庭に関わる政策の「縦割り」化を防ぎ、各省庁、自治体、民間団体等と連携した「子ども・家庭政策の司令塔」としての役割が期待されている。

 司令塔に求められるのは、現状の正確な把握や情報の発信である。件数の多寡に反応をするだけではなく、まずは「いじめの認知件数」の意味を国民に対してわかりやすく説明することを期待したいものだ。

 それによって勇気づけられる学校関係者、そして救われる子どもたちの数は少なくないはずだ。

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