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「急いで口で吸え!」

 1981年に小林克也や伊武雅刀らのユニットである「スネークマンショー」が発表した同名のアルバムには、「急いで口で吸え!」というタイトルのラジオドラマが収録されていた。それは、次のような内容だったと記憶している。

 舞台は、戦場となっているジャングルの中。
 基地内では上官が兵士たちを集めて、戦場で生き延びるためのコツを伝授している。
 上官が伝えたコツの一つ目は、
「もしも戦場で毒ヘビに噛まれたら、傷口をナイフで切り開き、急いで口で吸え!」
 というものだった。
 上官は兵士たちに、
「急いで口で吸え!」
 の部分を順に復唱させる。
 続く二つ目のコツは、
「もしも戦場で毒グモに刺されたら、傷口をナイフで切り開き、急いで口で吸え!」
 だった。
 その復唱が終わると三つ目は、
「もしも戦場でサソリに刺されたら・・・」

 上官の話が終わると、兵士たちは敵陣へ突撃する。
 そして、しばらく銃声が続いた後、静寂が訪れる。

 本当に必要な情報は何一つ与えられず、突撃させられる兵士たちの悲哀を描いたブラック・コメディである。だが、第二次世界大戦末期の某国軍隊でも、これと大差がない状況があったようだから、けっして笑いごとではない。
 また、戦場以外の場面も含めれば、似たようなことは今でもどこかで起こっているはずだ。


 ・・・なぜ、40年以上も前のラジオドラマのことを思い出したかというと、最近、こんなニュースがあったからなのだ。

深刻な教員不足 県教育長が街頭で教員確保へ協力呼びかける

新年度に向けて高知県内の小中学校に配置する教員が大幅に不足しているとして、12日、教育長がみずから街頭に立ち、教員確保への協力を呼びかけました。

長岡幹泰教育長をはじめ、高知県教育委員会の職員12人は12日、休日でにぎわう高知市の帯屋町商店街に出て、街ゆく人に新年度の教員確保への協力を呼びかけました。

高知県教育委員会によりますと、今年度に採用した小中学校の教員は予定より30人ほど少ないなど、教員の不足が深刻で、このままでは新年度に例年どおりの教員数を配置できない学校が出てくる可能性があるということです。

教育委員会では、退職や子育てで現場を離れた人など教員免許を持っている人に協力をお願いしたいということで、長岡教育長も「身近に教員免許を持っている方がいれば紹介をお願いします」などと声をかけながら、チラシの入ったティッシュを配っていました。

大学生の女性は「大学の友人でも教員免許を取るだけで、実際には教員にならない人が多いと感じます。働く環境も改善して数を確保してほしいです」と話していました。

高知県教育委員会の長岡教育長は「長年、教育に携わっていますが、街頭に立つ必要が出るほど厳しい状況は初めてです。少しでも多くの人に協力してもらいたいです」と話していました。

NHKニュース(高知支局)2023年3月12日

 このニュースを基に、教員不足をテーマにしたラジオドラマをつくると面白いかもしれない。もちろん、タイトルは決まっている。

「急いでティッシュを配れ!」

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