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第三者の目

「岡目八目」という言葉がある。もともとは囲碁の用語で、
「碁の対局を脇から見ていると、実際に打っている者よりも八手ぐらい先まで見通すことができる」
 という意味である。

 そこから転じて、
「物事の当事者よりも、第三者のほうが情勢や利害得失などを正しく判断できる」
 という意味で用いられる言葉だ。

 私自身がこの「岡目八目」を実感したのは、20代のころに小学生のバスケットボール・チームでコーチをしていたときである。

 他のチームの試合を外野から見ているときには、
「ここは、守り方を変えたほうがいい」
「すぐにタイムアウトを取るべきだ」
 といったことがよくわかる。

 けれども、いざ自分がベンチで指揮をする段になると、客観的かつ冷静に判断をするのは難しいものだ。

 まさに「岡目八目」、サッカーでいえば「セルジオ越後の解説」のようなものである。


 これは教職大学院の院生が論文を書くときにも言えることだろう。

 特にまとめの時期になると、執筆している本人には論文の全体像が見えなくなりがちだ。また、本人にとっては自明のことであっても、読み手には伝わりづらいということも生じやすい。

 無論、執筆者自身が客観的な目で読み直すことも必要だ。しかし、それと同時に第三者の目を借りることも大切なのである。

「ここの記述については、よく意味がわからない」
「この部分は論理が飛躍しているんじゃないか」
 等々と、第三者は本人が気づかないことを指摘してくれるものだ。

 現在、教職大学院で課題研究や修士論文などに取り組んでいる院生の皆さんには、こうした「第三者の目」を有効に活用してもらいたいと思う。

 そして、このようにお互いの論文を読み合うような「よき仲間」をもつことも、教職大学院での生活では大事なことなのである。

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