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「カタカナ語」ではなく

 11月26日にTBSホールディングスは、旧ジャニーズ事務所のジャニー喜多川元社長の性加害など同事務所をめぐる問題とTBSとの関係について実施した特別調査委員会の報告書を公式サイトで公表した。また、同日早朝の番組「TBSレビュー」の放送時間を拡大し、この報告書の内容を伝えている。

 特別調査委員会の調査対象となったのは、
・元社長の性加害をめぐる東京高裁、最高裁判決の報道対応
・旧ジャニーズ事務所所属のアイドルグループメンバー2人が道交法違反、公然わいせつ容疑でそれぞれ逮捕された際の対応
・元社長が運転する車の追突事故のニュースが放送を取りやめた経緯
・英国BBCによる元社長に関する報道からTBSが報道するまでの対応
 などである。

 こうした一連の問題で、TBSの報道局、編成局などが事務所側に忖度や気遣いなどをしていた事実が、記者や幹部ら現場の声とともに紹介されている。

 なお、報告書の中ではTBSホールディングスの佐々木卓社長自身も調査対象者として記述されている。

 佐々木社長は番組の最後に出演し、
「この結果を重く受け止めます。猛省しています。『もはや釈明は通用しない』とも指摘されています」
 と語り、
「旧ジャニーズ事務所が大きく成長する中で事務所への遠慮や特別な配慮が出るようになった」
 と説明した。

 そして、
「報道部門でも会社の取引関係の事情で逡巡したり、ペンを鈍らせてはなりません」
 と述べた後、次のように宣言している。

「取引先の人権問題にコミットする『人権デュー・ディリジェンス』態勢を整え、すべてのステークホルダーに人権侵害を許さない対応を求めていく」


 報告書の内容はともかくとして、社長による最後の「宣言」はいただけない。なにしろ、70文字足らずの中に「コミット」「デュー・ディリジェンス」「ステークホルダー」と、カタカナ語を3連発しているのだ。

 たしかに、
「該当する日本語がない」
「日本語にすると微妙なニュアンスが伝わらない」
 ということもあるだろう。

 しかし、安易にカタカナ語を使うことで、その意味を深く考えたり議論したりする過程が省略され、思考停止をしてしまうことが懸念される。

 先ほどの「宣言」からカタカナ語を廃して、

「取引先の人権問題について徹底的な調査をする態勢を整え、すべての関係者に人権侵害を許さない対応を求めていく」

 とでもしたほうが、はるかに意図が伝わるのではないかと思うのだ。


 ついでに言えば、学校教育の分野でも、
・ウェルビーイング
・インクルーシブ
・レジリエンス
 といったカタカナ語で煙に巻かれ、思考停止をしないように気をつけていきたいものだ。

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