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「だれがコロンブスを発見したか」

 Mrs. GREEN APPLEの新曲『コロンブス』のミュージックビデオが、「先住民を類人猿に見立てているかのように見える」「差別的だ」とされてSNSで炎上し、公開停止に追い込まれた。

 こうなってしまった背景に、かつては英雄視されていたコロンブスに対する評価が、いまや欧米で一変してしまったということもあるようだ。

 この記事にもあるように、15世紀のヨーロッパ諸国による「植民地獲得競争」の中で、コロンブスがその先兵的な役割を果たしていたということが、今では通説となっている。

 コロンブスは先住民に奴隷労働を強い、女性を性的奴隷とし、従わない者の手首を切り落とした。その間、コロンブスたちがヨーロッパから持ち込んだ病気によって島では死者が増えていった。コロンブスは死ぬまで、自分はアジアに上陸したと思い込んでいた。

 私が子どものころに読んだ伝記の中のコロンブスとは、まったく異なる人物像がここにある。


 アメリカのエッセイストであるアート・バックウォルドのコラムを集めた『だれがコロンブスを発見したか』(永井淳訳、文藝春秋、1980年)という本がある。

 表題にもなっている短いエッセイは、「アメリカ大陸にやってきたコロンブスに最初に会った先住民は誰なのか」という内容である。

 このエッセイの中には、コロンブスが「新しい進んだ文明を教えてあげよう」というと、先住民の首長が「何を生意気いうのか。われわれはここに何百年も生活して平和に暮らしている。あなたたちの世話になる気はない」と答えるという架空の会話が載っている。

 この会話に象徴されているように、エッセイ全体を貫いているのは西洋人に対する痛烈な皮肉である。従来の「歴史」では、コロンブスが「新大陸を発見した」ことになっているが、先住民からすれば「コロンブスという人が来た」に過ぎないのだ。

 西洋人にとって、アメリカの「歴史」はコロンブスが上陸した日から始まっていたのかもしれない。しかし、当然のことながら、すでにそこには先住民の生活や文化、歴史があったのである。


 このように、視点を移してみると物事がまったく別の見え方をするということがあるものだ。

 そういえば、以前にこんなポスターがあった。

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