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【続】「バーチャル」と「リアル」の壁
前回の記事では、
・「リアル」なスポーツの動きを「バーチャル」の世界で体験することが可能になっている
・「バーチャル」の世界で練習を積んだ者が、「リアル」なスポーツで活躍することも可能になるはずだ
ということについて書いた。
これはけっして未来の話ではなく、一部ではすでに現実になっている。
たとえば、米国のプロ野球(MLB)では、すでに多くのチームが「VRトレーニング」を取り入れている。具体的には、バッティング練習のなかにVRを導入し、対戦する投手の球速や投球フォームを事前に体験できるようにしているのだ。
サッカーでは、ゲーム中に状況判断をする能力を高めるためにVRが用いられている。ボールや味方と相手の位置などの状況を的確に把握し、展開を予測する認知能力や、認知した上でどのような動きをするのかという判断能力を磨くことに特化した「VRトレーニング」があるのだ。こうしたトレーニングを重ねることで、状況に合わせて最善のプレイを選択する能力が培われるのだ。
また、日本で最も一般的なのは、ゴルフでの「VRトレーニング」だろう。センサーと連動させてスイングの軌道を再現したり、打球の軌道をシミュレーションしたりすることは、すでに各地のゴルフ・ショップなどで体験をすることが可能だ。風の向きや強さなどの条件を変えることも、VRであれば自由自在である。
「VRトレーニング」の魅力は、
・通常では再現が困難なシチュエーションでも体験することができる
・何度でも繰り返してトレーニングをすることができる
・場所や参加人数にとらわれず、どこでも、そして1人でもトレーニングすることができる
というところだろう。
今のところ、人気の高いプロ・スポーツや競技人口が多いスポーツでの利活用が進んでいる。しかし、こうしたノウハウは学校体育や生涯体育の分野でも応用することが可能だ。
・・・これまでは「ゲームばかりしていると体力が落ちる」と言われていたものだ。けれども、これからは「ゲームによって体力や運動能力を向上させることができる」という時代になっていくのかもしれない。