知識のゲームの勝敗についてわかりやすく解説
誰もいない店内、昨日はとても暇だった。
すると……ある常連さんが、変わったお客さんを連れて来てくれた。
聞いてもない雑学をベラベラと自慢げに話してくる。
いかにも自分は博識で頭が良いと言いたげだった。
しかも、お金持ちで態度も横柄だ。
なんか面倒なのがやって来たな。
これなら暇な方が幾分マシかも知れない。
そう思って接客していると、突然
「君、私と知識の勝負をしよう」と言う。
「答えられなければ、罰金のゲームだ」
本当に面倒な奴だな。
どうやら断る訳にもいかなそうだ。
「きっと私より物知りなので、私が勝てる見込みがありません……なので少しハンデを下さい」
そう持ちかけてみた。
「いいだろう……君は、あまり稼いでなさそうだし……私が答えられなければ10000円、君が答えられなければ1000円でどうかな」
10倍のハンデか……しかし、その言い方がなんか癪に触るな。
「わかりました。ハンデありがとうございます。でも……ドキドキを味わう為にもっと高額でもいいですよ」
「大した自信だな……所詮、飲み屋のマスターがどれくらいの知識を持っていると言うんだね」
「…………いえ、身の程知らずは承知の上です」
「いいだろう、では私が答えられなければ50000円、君が答えられなければ5000円でどうかな」
「はい、それくらいなら払えます。ありがとうございます。では……お客様からどうぞ」
「では、地球の直径は何キロだ?」
なるほど……そんなの考えた事もないし、これからの人生に於いてきっと何の役にも立たない。
頭を捻って考えた所で、知らないものは答えは出てこないので、すぐさま諦めた。
「すみません……わかりません」
私は財布から5000円札を取り出し、彼の前に置いた。
お客はそれに手をつける事もなく、ドヤ顔で回答について話し出す。
「ふん、サービス問題だぞ……そんな事も知らんのか、12,756キロだ。13,000キロでも正解にしてやろうと思ったのに……因みに赤道の距離と……」
また長々と雑学を披露し始めたので、
「そうなんですか?さすが博識でいらっしゃる……いよいよ勝てる気がしません」
わざと途中で会話を遮り平常心に揺さぶりをかけ、同時に自尊心もくすぐる。
まんまと嵌り、お客は少し怪訝な声で
「さぁ、次は君の番だよ」
と勝負を焦った。
なるほど、ルールは理解した。
私に勝負を挑んだのが間違いだったね。
『さぁ、ゲームをはじめよう……』
「はい、ではいきます……朝は緑色、昼は紫、夜になると黄色になるモノ……何かご存知ですか?」
「なぞなぞかな?」
私はゆっくりと一回長い瞬きをして見せ、何も答えるつもりはない意思を知らせた。
お客は長い時間必死になって考えたが、これと言った答えに辿り着く事が出来ず、無言のまま悔しそうに財布から10000円札を5枚取り出してカウンターに置く。
私は間髪入れず、その50000円を自分の財布にしまう。
「全然わからない……悔しいな、正解はなんだね?教えてくれ」
私は無言のまま、再び財布から5000円札を取り出し、自称博識のおじさんの前に置いた。
本日の勝負、プラス40000円で私の勝ち。