【妄想ライオンズ80】 これが答えだ!スタンドからアウトをもぎ取る背番号53
ライオンズの春の進撃を支えているのは、一番に定着しつつある背番号53だ。走攻守しっかり揃った活躍を見せ、ライオンズの1番問題を解決しつつある。
そんな彼は、オリックスとの3連戦の初日に、絶対の自信を持つ守備で、2つの「ミス」をした。
4回、崩れかけた今井を救うべく、ライト前ヒットにチャージをし、ホームへの送球体制に入る。が、目を切るのが一瞬早かった。難しくもないゴロをハンブルして、ランナーを生還させてしまう。
さらに、6回、追いついた後の守備。2死ランナー2塁、バックホームに備え全身守備を敷く中、頭上越える大きなフライがライトに飛ぶ。必死にバックをし、ダイビングキャッチをする。それは、取れれば大ファインプレーというところだったが、惜しくもグラブに一旦入ったボールは、着地の衝撃でグラウンドにこぼれ落ちていく。
誰もが、グッドファイト、ナイスチャレンジと思った。本人を除いては。
彼には、「追いついた」「取った」という確信があった。 大事な大事な、同点後の1点だ。これを取ることが、チームを、投手を救うことになる。 グラブに当てたということは、追いついていた、ということだ。その状態まできて、取れなかったことは、彼の中では100%「ミス」だった。
グラブを地面に叩きつけ、全身で悔しさを露わにする。グラブを拾い上げた後も、興奮が収まらず、何度も何度もグラブで手を叩く。
その姿は、周りからすれば、少し異様にみえた。彼だから追いつけた。普通ならライトオーバーのヒットだ。それなのに、ここまで悔しがらなくても。。。
しかし、彼に取っては、この2つのプレーは「ミス」だった。他の人にとってはそうではなくても、彼にとっては、完全なる「ミス」だった。 守備だけは、絶対に負けない。絶対の自分の領域だという思いがあった。それなのに、その守備で貢献できていない。
その悔しさは、どうしたところで、守備で取り返すしかなかった。
迎えた日曜日の2回。オリックスの8番の外国人の放った打球が、明らかに「ライトのファールゾーンのエキサイトシート」に飛んでいく。ふらふらと勢いのない打球だが、打った瞬間に「ファール」と思われた。
しかし、彼だけは、そう思わなかった。
「この打球の勢いならば、追いつく。ギリギリでグラブに入れられるはず」 そう決めた彼は、ファールゾーンに出て、ボールの落下点、つまりスタンドの1m少し先の方を見定め、まさにスタンドに落ちようとするそのボールを、文字通りに「空中でもぎ取る」。
一瞬、球場全体が、何が起こったのかがわからなくなる。 しかし、彼が、派手なアクションもなく、ボールを持って走ってくる様子を見て、理解する。
投手が大きくガッツポーズをする。 スローで見れば、本当に「空中に浮いている状態で、スタンドの中にあるボールを、とってきた」様子が見られた。
これが答えだ。
これが、僕の守備だ。そう言わんばかりに、嬉しそうな顔ひとつせずに戻ってくる。
背番号53、愛斗の意地。彼こそライオンズの新たな外野のヒーロー。