「私がいない街の景色はどうでもいい?」と呟いた

title:小声は此岸に響いて」THE NOVEMBERS

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何かを好きだという気持ちが、苦しさを生んでしまう瞬間を描いた作品が好きだ。

太宰治の『駆け込み訴え』

キリストを誰よりも愛していると言い、故に裏切ってしまうユダ

ヤマシタトモコの『恋の話がしたい』

男の人を好きになってしまった男の人が告白を受け入れられた後、突然「こっぴどくふられたかったんだ」といって泣く

どうして私はこういった作品が好きなのかとわからなかったが、最近何かを好きだという気持ちが、苦しさを生んでしまう瞬間だからだと、そう気づいたのは友人が言った一言からだった。

『不謹慎、悪口、下ネタ、惚気、いじり、悪ノリ、という類のもの、めちゃくちゃ面白い分、ちょっと間違えるだけですごく人を傷つけかねない危険物で。そういう「面白い」、私はすごく好きだけど。

人を傷つけないように制御する加減ができない人間だと自分を値踏みしているので、なるべく避けている。』

というもの。


私にとっては『好きだ』と言う気持ちもそうだった。で、それはかつての経験からだろうなと。

今回はそれに気づいたので、整理として残す。


中学生の時初めて付き合った彼氏がいた。何もかも楽しくて、胸が温かくなると言うことがどういうことか、恋と言うものは素晴らしいものなんだと思っていた。

ある日母が近所の噂で私が恋人いることを知った。そして母が情緒不安定で泥酔した夜、彼氏の家に朝方まで電話し怒鳴っていた。

当時の事はあまり覚えていないけれど、何かひどいことを言っていたように思う。人格の否定や人種的差別発言も浴びせていた。力ずくで止めようとして何度も振りほどかれた。気が付いたらさ朝だった。

次の日から私は恋人の顔見れなくなってしまった。今となってもなんて弱い人間だろうと思うのだけれど、この温かい感情は人を傷つけることがあるものだったのだと私は知らなかったのだ。

辛いことなので思い出さないようにしたため詳細は覚えていないのだけれど、恋人から「もう一緒にいるのが辛いだろうから別れましょう」という話になった。最後まで相手のことを思いやれる恋人のことをいつまでも私は尊敬するのだろう。

つらいことは感情以外忘れたが、素敵な思い出はよく覚えている。

夜抜け出して地元の神社で会ってずっと喋っていたこと

手作りのビーズのキーホルダーをくれたこと

一緒にたくさんゲームをしたこと

大好きなバンドの知らない曲を教えてくれたこと

とても絵が上手で、漫画を書いたら私に1番に見せてくれたこと

兄弟達と一緒に人生ゲームをしたこと

近くの駄菓子屋さんで買ったお菓子

私が方向音痴すぎてすごい笑われたこと

こそこそっと教室で手紙交換したこと

それを友達に見られたりしてごまかしたこと

最初は印象がよくなかったけど、たまたま席替えが前後になって仲良くなれたこと

やたらリアルな蜘蛛を作ってドッキリを仕掛けてきたこと

制服の袖を引っ張って手を振る姿

なんとなくどこかひょうひょうとしている姿

いつもニコニコしてたけど真顔になる時が私はとても好きだった

男の子のほっぺたって薄いんだなぁと思ったこと

私を抱きしめるときにすごく時が早かったこと

抱きしめられたときの匂いを思い出すこともある

初めてキスしたときのこと

傷つけたにもかかわらず画面の向こうで泣いてくれたこと

自分のことをこんなにも愛してくれる人がいるんだと言うことに涙が出た。恋人のことを思い出すといつでも私は当時に戻る。いつかこのことをどこかで消化しなければ前に進めないのだと思いながら、あまりに辛く押し殺していたせいで詳細には思い出せないままだ。

それから、私は私の好きな人の前でうまく話せなくなってしまいました。

いつも彼のことを思い出すと自然と涙が出る。あの時から私は彼を傷つけてしまったからその辛さがずっと残っていて自分が自分の存在が誰かを傷つけるとしか思えなくなってしまった。(正確には似たようなことがその後もう一度あり、それが決定打となってしまった。)

誰かを好きだと言う気持ちが私にとっては罪なのだ。

そう思い込んで、傷つきたくないのだと防衛しているのだなと自覚しているが、認知のゆがみは客観視してどうにかできるものではない。自分の苦しみを相対化したところで心は救われない。


中学校卒業したら会う事はなくなってしまったけれど、地元で会ったとき手を振ってくれたこと、私は一生忘れません。ただ1度も繰り返すことができず、足がすくんで、動けなくなってしまった頃から、私は何も変わっていません。相変わらず弱いままです。いつかあなたに笑顔で会えますように。そんな日は無いかもしれないけれど。

成人式の時もひと目見ました。
きっとあなたも私に気づいていたと思います。ごめんね、いつも知らないフリをして。もうどうしたらいいかわからなくて真っ白になってしまう。もう一生あなたの顔を直視できないかもしれない。私たち何も知らなかった。
ただ幸せだった。本当に短い期間なんだけどこんなに幸せをくれたこと、私は一生忘れないでしょう。

できたら彼が幸せになっているんだと私に誰か教えてください。自己満足なので。どうかここでだけ幸せを祈らせてください。


ありがとう。

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