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【エッセイ】出現したカメムシ、焦りまくる私と逃げる犬

仕事が終わった!

ぐ〜っと伸びをして、大きく息を吐く。

まぁ、この後会社のオンラインイベントに参加するんだけどね。さっさとお風呂入らなきゃな。

そんな気持ちで、ノートパソコンとコップを持って1階に降りる。

おや…?

目線はすぐに、圧倒的存在感の何かに吸い取られた。

扉の横にへばりつくそれは…

圧倒的なカメムシだ。


「な、なんかいるけど!?!」


思わず叫んだ。
でかい、でかすぎる。

小さな羽虫ですら、1人で騒ぎ立て、助けを呼ぶような私にとって、家の中にいて、生きていて、飛ぶかもしれないカメムシはあまりにも刺激が強すぎた。

とりあえず息を殺して、抜き足差し足忍び足で母親の元に歩み寄る。

「”あれ”、どうするの…!!」

母「捕まえるしかないでしょ。みかん、捕まえてよ!」

「無理無理無理無理無理無理!!!」

母「私も無理!!」

あぁ、なんという不運だろうか。
今日は虫をものともしない父親が出張なのだ。

虫嫌いの我々で、対処するしかない。

少なくとも、放置なんてもっての外。いつまた現れるかもしれない恐怖に怯え過ごす事になる。

我々は、必ずあのカメムシを、捕まえるしかない。

頭をフルスロットルで回転する最中、思いつく。

そう、一人暮らしの時にお守りとして持っていたグッズを幸運にも私はまだ持っていた!

その名も、「ゴキすぅ〜ぽん」である。

ゴキすぅ〜ぽんは、家にある掃除機にアタッチメントとしてつけることで、虫を吸い、そのまま閉じ込めて捨てられる、画期的な製品なのである。

あまりにも虫が苦手な私は、一人暮らしにあたり、殺虫剤含め、いくつか虫対策グッズを買い揃えていた。その中の一つ。幸いにも1年使わずに置いていたこのグッズが日の目を浴びる時が来た!

今こそ虫に勝つ時だ!!


私は母に「素晴らしい製品があるんです」と説明し、早速掃除機に装着した。

念の為に吸引力を確認しようと、ごきすぅ〜ぽん装着掃除機に手を吸わせてみる。

ギュ!と吸われて、ポン!と外れた。

いける!これなら!

私は掃除機の先を、カメムシに向ける。



…しばし、思考が止まった。なんだろうこの違和感。ごきすぅ〜ぽんの先端と、カメムシの体躯を見て、叫ぶ。


「小さい!!!!!」


そう。先端の口径はまだいい。ごきすぅ〜ぽんは奥行きがそんなにない。これじゃ、閉じ込める用の付属綿を2個も吸い込めない。つまり、閉じ込められない。閉じ込められないということは、飛び出るということだ。

私は絶望した顔で、力なくごきすぅ〜ぽんが先端に付いた掃除機を置く。

無理だ…この製品を持ってしても、私は勝てないんだ…。


絶望していたその時、母が「変わって!」と声を出す。私が置いた掃除機を手に、確かに小さいと言いながらも、打開策を考えようとうんうんと唸る。そして、言った。

「厚紙があれば蓋できる!」

……私はその言葉を聞いて、「無理無理無理無理無理無理」とまた首を振った。だが、母親は止まらない。

「結局虫の傍に手を持っていく必要があるくない?抑えられんの?綺麗に?抜け出ない?抜け出さないそれ?」

大混乱して無理な理由を列挙する私を尻目に、母親は厚紙を取り出し、抑えるシミュレーションをした後、しっかりカメムシを捉えた。

が、全然見えてる。カメムシくんの体が。

しかし、母親はその先に厚紙を当てて、閉じ込められたと言い張るのだ。言い張ってくるのだ。

私の虚しい無理無理マシンガンは放置され、「玄関扉開けて!逃がすから!」と指示が出される。

心の準備ができないし、本当にそれでできるの!?飛んでこない?

やだ!ヤダヤダヤダ!と頭の中で虫嫌いの小さな私が泣きじゃくってる。

でも、今私がやらないと母親が死んでしまう…!(死なない)

そんな脳内混乱状態で、半泣き母親の元に走り寄り、玄関扉を開ける。

その瞬間、小脇から玄関扉を走り去ろうとする黒い影がいた。


愛犬である。


我が家のアイドル、1歳半の黒いポメラニアンである。


もちろん、現場は阿鼻叫喚に包まれた。


カメムシ in 掃除機を抱えた上で、犬をかかえ止める母。

カメムシが怖くて、近寄れず、扉から騒ぐだけの私。

散歩だと思って走り抜けようとするも、いつもと様子が違うことに気づきビビり散らかす犬。


地獄絵図である。

そんな中、母は強かった。

「なんで内扉閉めなかったのよ!」と私の所業にプンスコしながらも、怯えた犬と掃除機を両脇に抱えて戻ってくる。

しっかりと、カメムシも逃がして。

あの状態で、掃除機の先端からごきすぅぽんを外した母は凄い。感謝しかない。



今書いていても、思う。
私は本当に役立たずであった。

知っていたが、虫を前にした私は、たぶん棒切れよりも戦闘力を無くす。いや、むしろマイナス効果しか付与できないのだ。

今回の最大の問題は、犬を下ろしたことにある。そのうえで、内扉を閉めなかった。

1歩間違えれば、というより母の瞬発力がなければ、愛犬は野生に還るところだったのだ。

いや、それよりも走り去った先の交通事故の方が恐ろしい。二度と起こしたくない。

私は学んだ。

虫を前にした私は、私では無いと。

だからこそ、そんな時こそ、お茶を1杯飲んで深呼吸しようと思った。

虫が出た▶︎お茶&深呼吸▶︎対処

こうすることで、少しは冷静になれるはず。
今度似たケースが起きた際に、上手くできるはずだ。そう信じる。

次カメムシなどのデカ虫が襲来したら、次こそリベンジしなければならない。
棒切れよりは使えるみかんになって、勝つぞ…!


そしてお父さん。

早く出張から帰ってきてください。。😢

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