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【気になる土偶#109】二つに折られ重ねられ/松本市考古博物館

ちょっと変わった恰好で土に埋もれていた土版どばんです。
この笑顔に託されていたことは?

今から約3000年前 縄文時代晩期

人面付土版じんめんつきどばん

女性の全身が施されている珍しい土版です。
土版は縄文時代の終わり頃に東日本で盛んに作られた粘土の板で、祈りの道具であったと考えられています。

高さ15.8㎝。キュッと小さな顔にやさしい目と小さな口があり、笑っているようにも見える女性像です。
下半部にはレース?のついたパンツのようなものが表され、もともとは赤く塗られていました。

そして小さな乳房のある胸の下は故意に割られ、完全に二分されています。

後ろ姿には、この地域の土器の文様が見られます。

これは、この土版の出土時を再現したものです。
2つに割られた体は重ねられ、土の中に埋められていました。

この土版が見つかったエリ穴遺跡は、約2000年間に渡って人が住み続けた小さな台地にあるムラでした。そこに一時にあった竪穴住居は4~5軒ほど、人数にして15,6人ほどのとても小さなムラでした。

ムラから多く見つかったのが「配石遺構はいせきいこう」と呼ばれる、大小の石を並べたり積み上げたマツリを行うための場所です。
また約2500点もの「土製の耳飾り」が見つかっています。
「土製の耳飾り」は人生の節目毎に付け替えたと考えられているものです。

ここに暮らした縄文人は、マツリや節目の儀式を大切にして生活をしていたようです。
女性を模した土版を2つに割って埋める、といったことも、何らかの大切な祈りであったと考えられそうです。

焼く2000年もの間、そう広くない場所に人が住み続けムラを存続させるには、様々な知恵や工夫があってのことでしょう。
微笑んでいるような顔からは、何か輝かしい未来への願いが込められているように思えてきます。


*タイトルは〝土偶〟ですが、
カオがついた土製品や土器なども紹介しています。

*参考資料
松本市文化財調査報告書No,127

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最後までお読みくださり有難うございました☆彡

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