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想像よりずっと広い『遮光器土偶』の世界
縄文土偶で最も有名と言われる遮光器土偶。
目の形が遮光器(雪から目を守るゴーグル)に似ていることから「遮光器土偶」と名付けられました。
宇宙からやってきた、といっても不思議ではない、全身コテコテ感満載の得体のしれぬ姿。好きor嫌いを別にしても、ちょっと気になる存在ではないでしょうか。
全国から出土した土偶の数はおよそ約2万点。そのうち約1割がこの遮光器土偶であると考えられています。それだけに種類も大きさも実に多彩。今回はそんな遮光器土偶たちを紹介します。
日本一有名な土偶「しゃこちゃん」
遮光器土偶の中でも教科書等でお馴染みなのが、青森県「亀ヶ岡石器時代遺跡」から出土した土偶・愛称「しゃこちゃん」。今から約3000年前の縄文時代の晩期に誕生しました。
頭上には髪型や装飾品を表していると思われる「王冠状突起」、なで肩で幅のある上半身、細いウエスト、太く短い手足、小さな手先・足先。そして全身を覆う美しい左右対称の雲形の文様。
左脚は欠けていますが、遮光器土偶の特徴をすべて備えている模範的な土偶です。
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所蔵 東京国立博物館蔵
しゃこちゃんが発見されたのは、まだ考古学が一般的でなっかた1887年(明治20)。津軽半島の日本海に近い青森県つがる市(旧・木造町)の低湿地帯から出土しました。
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この地域は江戸時代から土器や土偶が出土し、明治期から繰り返し発掘や研究が行われてきました。
現在では「亀ヶ岡石器時代遺跡」として、縄文時代の晩期に発生した「亀ヶ岡文化」の発祥の地として全国に知られるようになりました。
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こうして広く名を轟かせるようになったしゃこちゃんですが、実物は遠く離れた東京国立博物館に所蔵されています。
故郷つがる市のJR「木造駅」には、高さ17mのしゃこちゃんの巨大モチーフが外壁を飾っています。列車が到着する度に目が光かる仕掛けがあり、ここが生誕地であることをアピールしているかのようです。
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中実or中空
遮光器土偶は、しゃこちゃんのような30㎝を超す大型ものから、手のひらに収まるサイズのものまで存在します。
それらは中身が詰まっている中実と、中が空洞になっている中空の2種類に分けられます。
10㎝前後の小型のものは中実が多いようです。普通に粘土のかたまりを繋ぎ合わせて、人形を作ったと思えるものです。
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大きくなるにつれて、中空で作られる傾向にあります。その理由は、「粘土がぎっしりと詰まっていると、乾きにくく焼きむらができる」ことにあったと考えられています。
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右:岩手県立博物館
各地へ伝わる
縄文時代の晩期、青森で生まれた遮光器土偶は、津軽海峡を越え北海道へ、また列島を西に下って関東や近畿へと伝わっていきました。その期間は今から約3,000〜2,400年前の約600年間。
それは土偶だけでなく、土器や祭祀用具、そこに生きた縄文人の精神性などの「亀ヶ岡文化」が、全国へ広まったことを表しています。
約600年間の時間と長い旅を経て、各地では独自の個性的な土偶が作られました。
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これも、あれも⁈遮光器土偶
様々に変容していく土偶たち。中には、本当にしゃこちゃんの血筋?と思えるような遮光器土偶も出現しました。
「豪華な王冠」
頭の飾りがあまりにも大きい。後ろから見ると、土偶なのか土器なのか分かりませんね。
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「シンプル化」
こちらは王冠らしきものは無くなり、遮光器のような目だけが目立ちます。
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右:平川市郷土資料館
「彩色を施す」
赤く塗られ、まつげを強調したような顔は、美しい女神を思わせます。
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「形そのものが変化」
しゃこちゃんと同じ青森つがるの出身ですが…あまりにも変化した様相です。
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「横に広い顔」
横長になった顔に細くなった目、王冠が変化したのか耳のようなものもあります。
右の土偶はトリの羽のような手が印象的です。
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所蔵 右:東京大学総合博物館
「岩偶にもなった」
土偶ならぬ、岩で作られた岩偶です。体の割に顔が随分と小さいですね。
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あなたの近くにも⁈
全国の土偶の1割というと、およを2000体の遮光器土偶が存在していることになります。ですが、完全な形であるものは少なく、多くは手足や胴体の一部分だけになっています。
むっちりとした上半身に特徴ある渦巻のような文様があったら、遮光器土偶⁈と疑ってみてくださいね。
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文様がなくても、この遮光器のような目を持っていたら、ほぼ間違いなしです。
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目を凝らして見ると、中には指先ほどの小さいものも。
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空洞の膨らんだ手や脚も結構たくさん見かけます。
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美しい遮光器土偶も
しゃこちゃんと比べて知名度は高くありませんが、美しさ、芸術性の高さでは1番と思わるのが、この宮城県の土偶です。
高さ35.7㎝、丹精な顔立ち。
いったん施した縄目の文様を摺り消す「磨消縄文」を駆使し装飾効果を高めています。
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所蔵 東京国立博物館
このような優れた一級品から素朴な造形まで、幅広い遮光器土偶の世界には、土偶の楽しさや面白さ、不思議さが溢れてるように思えます。
どこかで土偶に出会ったら、作り手である縄文人に思いを馳せながら、しゃこちゃんのDNAを探してみてはいかがでしょうか。
*参考資料 土偶美術館 小川忠博/原田昌幸
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最後までお読みくださり有難うございました。