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個性派揃いの縄文の遺物たち| 東京都 調布市郷土博物館
いよいよ夏休みがやって来ます。子どもの時は、とにかくウキウキ・ワクワクの毎日を過ごしていました。
朝早くからラジオ体操へ行ってスタンプを押してもらったり、毎日のように近くの市民プールに通って真っ黒になったり、ちょっとだけ夜更かしして大人のテレビ番組を観たり、ほんの少しだけ違う毎日に楽しいが溢れていました。
大人になった今、楽しいよりも暑いが勝ってしまい、子どもの時のウキウキ気分は随分小さくなってしまいましたが、それでも夏というだけで、どこか開放的な気分になりますね。
いつもは人影もまばらで、自分の足音が妙に響く地元の博物館も、自由研究のためや、夏休みのイベントで訪れた子どもたちと付き添いの親とで、活気ある空気が流れます。
好奇心いっぱいの子どの目、久しぶりに展示物を見る大人の目、それぞれに見て感じるものや頭の隅っこに記憶されたものが、後々の人生に彩を与えてくれるきっかけになるかもしれないなぁ、と思いつつ、一緒に並んで鑑賞を楽しみます。
私は日頃から、土偶や縄文土器などを見るために博物館や資料館へ出かけますが、その内容はインターネットで調べてもなかなか分からないことが多いのが現実です。
訪れて初めて、「わぁ、こんなかわいい土偶がいた!」「工夫が凝らされていて分かりやすい!」などなど、行ってみないとわからない、というのが本当のところでしょうか。
特に常設展や、地域の小さな資料館の情報はなかなか伝わってきません。
そんな地域の土偶や興味深い縄文土器を紹介していきたいと思います。
東京都 調布市郷土博物館
調布市は都心から20㎞の東京都のほぼ真ん中に位置し、南には多摩川が流れ、数々の縄文時代からの遺物が発見されています。
中でも下布田遺跡から出土した耳飾りは、直径9㎝以上の赤く塗られた花弁を思わせる精巧な作りで、調布市を代表する縄文の遺物と言えます。
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複雑なデザインに丁寧な作りの耳飾りです。
ここにあるのは複製で、
実物は「江戸東京たてもの園」で保管されています。
今回のイチオシは、印象的な顔が施されている土器です。
「人面装飾付彩文有孔鍔付土器」です。かなり印象的な顔が土器の真ん中に施されている、縄文時代中期の土器です。
この土器は上部に小さな穴が開けられていますが、「酒を作る時に発酵したガスを抜くための穴」または、「土器に動物の皮を貼って太鼓を作るための穴」などと考えられています。
ぽつんと顔だけが目立ちますが、よく見ると土器の顔を中心に、腕・手・指が対称に表されています。
出産を描いたともされ、再生や豊穣祈願がこめられているようにも考えられるそうです。
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縄文時代中期/原山遺跡
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顔の上から横に線が伸び、
そこから腕のようなものが下がり、
その先には3本の指のようなものがあります。
次に見たいのは、小さな土偶達です。
上の土器と同じ原山遺跡からは9体の土偶が出土しました。
こちらは、手のひらサイズの小さな土偶ですが、とても精巧につくられています。自立させるために脚に工夫がこらされていることから、祭祀などの時に、人々の前に置かれるなどした尊い土偶であったと思われます。
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関東でよく見られるポーズですが、
ちょっと手先が上に向いていて、
どこか神を仰ぐようなポーズにも見えます。
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大切な土偶であったことが分かります。
縄文中期/原山遺跡
こちらの土偶は全体的に素朴な作りですが、やはり上の土偶と同じように立たせようと思って作られたようです。
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目、口、小さな乳房、臍以外には、
一切の文様はありません。
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こちらは、バラバラになって出土した土偶たちです。
一つ一つ見ていくと、それぞれに個性があり、最初はどんな姿であったのだろう?と想像してしまいます。
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妊娠した女性を表しているようです。
耳飾りの形・大きさは様々です。
前述の耳飾りは、祭祀などで使われた特別なものであるようですが、こちらは小さく素朴な作りの耳飾りです。人々が実際に身につけていたかもしれませんね。
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円柱状や円錐形など、
簡単な装飾ながら
それぞれに工夫がこらされているようです。
土器もユニーク揃いです。
迫力満点のヘビの頭が貼りついているような土器です。
ヘビがとぐろを巻いている表現も土器に表されていて、煮炊きに使う土器ではなく、何か特別な意味を持った土器であったと思われています。
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こちらも顔の表現のように見える土器ですが、単なる文様かもしれません。
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調布市は3万年前から人が住み始め、その後も絶え間く人々の営みがあったとされる地域です。
このような縄文人の文化の足跡を垣間見ることは、今の私たちが生きていく何かのヒントにも繋がりそうです。
最後までお読みいただき有難うございました。