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ストリー仕立ての縄文展/ 「旅するジョウモンさん-5千年前の落とし物-」 :豊田市博物館

この春オープンした愛知県「豊田市博物館」。
やわらかな外光が降り注ぐ大空間は、誰もを迎い入れてくれる温かみで溢れています。
地元産の杉がふんだんに使われ、建設時にはCO2の排出を抑えるなど、サスティナブルな木造建築としても注目を集めています。

坂 茂設計

その開館記念展が
「旅するジョウモンさんー5千年前の落とし物ー」
ジョウモンさん
が「旅をしながら各地の縄文文化を知っていく」という全く新しい切り口の縄文展です。


ジョウモンさんの紹介

時は約5000年前の縄文時代中期。日本各地で人口が増え、その地方ならではの個性ある縄文土器が多く誕生します。

彼は長野県(伊那地方)生まれ。かつて日本列島の北から南までを旅した経験があり、今は結婚して奥さんの実家のある豊田市の「水汲遺跡」に家族と住んでいます。
「水汲遺跡」は川の近くの小高い場所で、木の実や魚がとれ、近隣の人との交流もあり、幸せに暮らしています。
これからここで生きていく…そんなジョウモンさんの決意には、かつての旅先で見たもの、感じたことも関わっているようです。

等身大のジョウモンさん

北から南へ、出会った土器の数々

旅先ではその土地の特徴を現わす土器と出会い、それぞれに土器の形や文様に違いがあることに気がつきました。
似ているのにどこか違う、驚きや発見の連続です。
その出合いの一部を覗いてみましょう。

とにかく円筒形なんです -北東北-

「円筒上層式土器」は北東北を中心に北海道・礼文島まで広がりました。
波状の口縁が際立ち、土器全体に縄文が施されています。

大きな突起と渦巻が自慢 -南東北-

大木おおぎ式土器」は宮城県~福島県を中心に作られました。
土器全体に縄文が施され、その上に区画をつくり、渦巻文や直角を連続させ文様を描いています。

燃えさかるモチーフ -信濃川流域-

火焔かえん型土器」は新潟県の信濃川流域を中心に、南東北や長野・富山県にまで広がりました。
鶏頭冠状突起けいとうかんじょうとっき」と呼ばれる鳥のトサカのような装飾は、一度見たら忘れられない造形です。

ジョウモンさん「スゴイ装飾に〝バクハツだ!〟と叫んだ人も。」

波打つ・ひねる突起 -北関東-

阿玉台あたまだい式土器」は利根川の下流域を中心に、茨城・栃木県から千葉県まで広がりました。
波打つような扇状の突起が際立ち、キラキラ光る雲母という粘土が混入されているものも多く作られました。

生命力あふれる造形 -関東西部-

勝坂かつさか式土器」は神奈川県~甲信越地方を中心に分布しています。
様々な形の土器に区画を割り、緻密な彫刻したり、動物や人面が表現されました。

やわらかな曲線 -中部高地(長野・山梨)-

曽利そり式土器」は中部高地(長野・山梨)中心に、伊豆や西関東まで広がりました。
様々な形の土器があり、立体的な造形と大きな把手、柔らかな曲線が特徴です。

東西日本の交わり -東海-

伊勢湾・三河湾流域は東西の文化が交差し、様々な様式の土器が生まれました。
その一つ北屋敷きたやしきⅡ式」は岐阜県や愛知県に多く見られる形です。
東日本と西日本の土器の影響を受け、それらを再編成した造形が生まれました。

本州の影響がいくつも見られる -南九州-

九州南部の鹿児島県では、本州の影響を受けたと思われる様々な土器が出土しています。
けれども底は小さく丸く不安定な形で、本州とは土器の使い方や価値観などに違いがあったと考えられるようです。

「深浦式土器」
「並木式土器」

ココロに響いたもの

ジョウモンさんは不思議な形の人形にも出会っていました。
小さな人形にはそれぞれに願いが込められ、とても大切にされていました。
その姿形から、言葉では言い表せないナニカ大切なものが伝わってきたようです。

板状ばんじょう土偶」は東北北部を中心に作くられ、十字で人の姿を現わしています。

ジョウモンさん「?」

『手を広げる土偶』は東京西部を中心に多くみられ、そのほとんどは5㎝にも満たない小さな土偶たちです。

「顔面装飾」は土器に付いていたと考えられるもので、目玉や鼻の孔までしっかり表現されています。

縄文不動産

長い旅を終えたジョウモンさんは、結婚するために故郷の山を越え豊田市にやってきました。
川や小高い丘があり食料も豊富であることから、ここで暮らそうと決意します。

豊田市内の縄文遺跡数は400以上にのぼりますが、竪穴住居が見つかることは稀で、しかも1つの遺跡には2~3軒程度。
ジョウモンさんの住まいもそのうちの1つですが、
「土偶と暮らせる家」「コンロ付き家」、はたまた「豊田スタジアムが見える家」など、魅力的な竪穴住居が揃っています。

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私は生きていく

ジョウモンさんは縄文土器だけではなく、美しいヒスイなどの装飾品や不思議な形の土製品や石製品、貝や動物の骨、調理道具や狩り・釣りの道具、丸木舟等々…多くのものを見て、そこに暮らす人々と触れ合う旅をしました。

旅を通して、人の多い土地や少ない土地、家の形やムラの大きさ、様々な食べ物や言葉、ならわしがあることを知ります。
そして暮らし向きの良しあしがあり、時には争いながらも、助けあい、皆つながりあって暮らしていることに気がつきました。

人々の小さな繋がりが、地方を越え、全体で見ると大きなネットワークで繋がっている…ジョウモンさんの生きた時代と同じように、私たちも今を生きていくのです。

参考図書
「旅するジョウモンさん」冊子 豊田市博物館

最後までお読みくださり有難うございました。


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