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企画展「JomonCollection-韮崎市-」レビュー/釈迦堂遺跡博物館
現在山梨県の釈迦堂遺跡博物館で、韮崎市の縄文を紹介する企画展が開催中です。
韮崎市は山梨県北西部に位置し、周辺各地域と同様に約5000年前の縄文時代中期の遺跡が点在します。
それぞれの遺跡からは特徴的な遺物が出土しており、さすが縄文王国山梨!と言える奥深い縄文世界を見せてくれます。
目次
美肌土偶
先ずは韮崎市を代表する土偶をご紹介しましょう。
際立つ美しさで知られる「ミス石之坪」です。
高さ12cm、磨き抜かれた滑らかな肌は鈍く輝き、顔や体には緻密に施された入れ墨の表現があります。胸から下は無くなっていて発見されていません。
一部に赤色の顔料見られることから、元々は全体が赤色に彩色されていたと思われる女神です。
彼女は竪穴住居内の貯蔵に使われたと考えられる穴の底から、4点の石器を伴って発掘されました。
近寄りがたいような優れた造形や出土状況から、通常の土偶とは一線を画す特別な存在であったと想像できるようです。
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同じような造形の土偶が他の遺跡から出土しています…が、その違いは一目瞭然!
親しみやすい作りの土偶は、日常に祈りをささげる女神であったのかもしれません。
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巨大な岩を囲んで
大きな岩の周りから出土したという「女夫石遺跡」の土偶たちです。表現が乏しいように見えますが…これにはある特別な事情がありました。
その事情とは…土偶たちは暫くの間、大きな岩の周りで野ざらしにされていました。それにより風化してしまい、文様などの表現がはっきりしないものとなったようです。
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この「女夫石遺跡」では実に約500年間に渡り、1つの大きな岩を中心に祭祀が行われ、また土器などが廃棄されていました。
このパネル写真はその初めの頃の様子を示すものです。岩の周りには70点もの土偶や石棒、ミニュチュア土器などが見られます。
やがて時代が進むと共にその意味にも変化が生じたのか、岩の周りには壊れた土器が多く廃棄されるようになりました。
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遺跡から出土した土器には、人を表していると言われる人体文のある深鉢や、
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頭に王冠のようなものを載せている蛇?がいる土器もあり、様々な祭祀がおこなわれていたと想像できるようです。
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左は「蜂巣石」と呼ばれるもので、何らかのためにわざわざ小さな凹みを作ったと考えられています。
それぞれに意味があろうかと思われる祈りの道具たち。縄文のアニミズムの世界観を表現しているのかもしれません。
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気になる土器
会場でひときわ目立っていたこの土器。2つの尖った突起は目のように、への字曲がった文様は口に見えないでしょうか?!
前述の「ミス石之坪」と同じ遺跡から見つかりました。
口のように見えるのは「みずち文」と言われ、サンショウ魚や魚類、龍など何かの想像上の動物を表しているとされる文様です。
突起は4面にあり、「みずち文」は前後2つ。
顔にも見えますが…果たして?!
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こちらは土器についていた把手です。
ぐるぐるの渦巻文様!?と思いきや、
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裏を見ると、タコの吸盤のような?仏様の螺髪のような?ものがたくさんあります。
これは「水煙文土器」の上部についていた把手状の装飾です。
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常設展にある「水煙文土器」と見比べると、その表現の幅が大きいことが分かりますね。
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展覧会では普段見ることのできないの「坂井考古館」の所蔵品も展示されています。「坂井考古館」は在野の考古学者の大正時代から50年間におよぶ採集品を中心に所蔵している博物館で、見学には事前申し込みが必要となっています。
この企画展に加え、常設展では可愛い土偶たちがたくさん展示されています。
博物館周辺はあと一か月もすると桃や菜の花で彩られますので、お花見がてら訪れては如何でしょうか!
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最後までお読みいただき有難うございました☆彡