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世界遺産になった縄文遺跡群を廻る旅 /2つの日時計と2つのストーンサークル -大湯環状列石(2)-
秋田県の大湯環状列石は日時計状組石をもつ2つのストーサークル。
それらは季節の廻りを示し、食料を得るための狩猟・採集の時期や厳しい冬の到来を教えてくれました。
そして夏至の夕暮は一年で一度の「ハレの日」。
周辺の集落から人々が集まり、夕日を望みながら盛大な祭祀がおこなわれたと考えられています。
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その「ハレの日」の様子は、
この遺跡に眠っていた数々の祈りの道具からも垣間見ることができます。
そしてその中には、
「彼らが認識していたと思われるある事」も含まれていました。
それらを見るために、遺跡に併設されている大湯ストーンサークル館へと向かいます。
ストーンサークルに合わせた?ように弧を描く優美なデザイン、木をふんだんに使用した建物は秋空とベストマッチ!
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ここには大湯式土器と言われる特徴的な文様や形の土器をはじめ、「ハレの日」で使われたと思われる数々の遺物が展示されています。
あれもこれもご紹介したいところですが、
今回はここでしか見ることが出来ない土器と土版をご紹介。
先ずは、右のケース内の大きな土器に注目を!
これは亡くなった人を土器の中に入れ、埋葬したと考えられている「土器棺」と呼ばれるもの。
主に「子どもを埋葬するため」のものであったと考えられ、全国各地で見つかっているものです。
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右の土器の表面を良く見ると、これは…
「遮光器土偶」が施されている⁉
それとも、「文様の偶然の産物」?
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遮光器土偶はこのストーンサークルが営まれていた後の時代・今から約3000年前(縄文時代晩期)に、主に東北地方で盛んに作られた土偶です。
日本で最も有名な土偶と言われ、その特徴的な顔やコテコテの装飾が印象的!
イヌイットが雪原で付けていたゴーグル(遮光器)のような眼をしていることから、その名が付けられたことは有名ですね。
その容姿は突然に表れたものではなく、その前の時代に作られていた土偶が徐々に変化したものであると考えられています。
ひょっとするとこの土器に描かれているのは「遮光器土偶の素案」であったりして⁈
まるで昨秋に会いに行った「しゃこちゃん」がこの土器にいるみたいです。
こちらは、縄文土器の域を超えていると思えるような精緻な土器。
「朱彩台付土器」は朱彩とあるように、元々は漆塗の朱色が際立つ高杯であったようです。
マツリの中心に朱色の優美な高杯、
縄文時代に作られていたと考えられる深紅の「山ぶどうのお酒」が注がれ、祖先へ、そして神へと捧げられたのかもしれませんね。
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そしてこの後ろにあるもの…
土偶?
いえ、「土版」です。
「土版」は、その字のごとく土で作られた板で、渦巻文様や幾何学文様、このように人の顔が表現されたものが全国で出土しています。
縦5.8×横3.7×厚さ1.5㎝、重さ48.3gの手にすっぽり収まるサイズのカワイイ「土版」。
出土した多量の土器より上の層に埋まっていたので、ストーンサークルが作られた後の時期に作られたと考えられるようです。
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この「土版」、
実はカワイイだけでなく不思議な特徴を持っているのです。
「土版」に〇で表された、
口、目、右胸、左胸、正中線(妊娠中のお腹に表れる縦の線)を順番に見ていくと…
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口 → 1、
目 → 2、
右胸 → 3、
左胸 → 4、
正中線 → 5、
後ろ姿です。
左右上部にあるのは〝耳〟と考えられています。
耳 → 3×2 =6
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数字が表されている土版!!
全国を見廻しても同じような「土版」はなく、どのように使われたものなのか分かっていません。
この可愛らしさから「子どもに数を教えるために作られた」という説もあるそうですが…。
「縄文人が数の概念を認識していた」ことは、入念に計算され作られたと思われるストーンサークルや日時計状組石、高杯などの精巧な土器から、ある程度想像できるかもしれません。
が、このように「数を表現した」ことを見ると、それ以上に数字というものが縄文人の生活に根付いていたものであったのでは?と考えられるのかもしれません。
そしてこの土版は「門外不出」!
国内はもとより、あのイギリスの大英博物館からのオファーも断ったという、ブレない姿勢が何ともカッコイイ!愛称はドバンくん。
出張しない代わりに精巧なレプリカが作成されました。その時の身体検査で分かったことが、「土版の底にある穴が口と繋がっていた」ということ。
つまり「消化器官が作られていた」という事実!
土版ではなく、土偶だった⁉
お腹に正中線がある…ということは、
「妊娠した女性を模した女神」という可能性も⁈
次回は縄文人が「こだわっていたこと」についてお伝えする予定です。
*参考資料
大湯環状列石ガイドブック
世界遺産になった縄文遺跡 岡田康博編 (株)同成社
最後までお読みくださりありがとうございました☆彡