縄文から続縄文…知られざる文化が続く北の大地 | 北海道縄文旅
かつて弥生時代がなかったと言われていた東北北部。
約40年前に発見された青森県の水田稲作跡が、厳しい気候の中で米作りにチャレンジした人々がいたことを伝えてくれています。
▼僅か12~13年で消滅した
「東北北部の最古の田んぼ跡」から見つかった「土偶」
津軽海峡を隔てた先は、
更なる寒さ厳しい北の大地・北海道。
そこにはどんな縄文時代が、またそれに続く時代はどうであったのだろう?
そんな当たり前に生まれた思いを抱え、先月末に北海道へ向かいました。
朝の遅い時間に羽田空港を発ち千歳空港へ、そこから電車とバスを乗り継いで昼過ぎに到着したのは、札幌市の「北海道博物館」。
会期終了が迫る『北の縄文世界と国宝』展へ駆けつけました。
国宝の火焔型土器、土偶5体をはじめ、世界遺産となった北の縄文遺跡群の遺物を中心とした展覧会、多くの人が詰めかけていました。
私がいの一番に向かったのは国宝『中空土偶』。
以前に東京で僅かに横顔を見ただけの土偶、
改めてじっくりと眺めるとその存在感に圧倒されます。
大きい! 高さ41.5㎝、肩幅20.2㎝
なんと精緻な作り!
現存している中空土偶(中が空洞になっている土偶)の中で一番大きいことから、大中空土偶と呼ばれることも。
現在の函館市、当時の南茅部町で、じゃがいも畑を耕していた女性が偶然に発見した土偶。
今から約3500年前の縄文時代後期に作られ、愛称はカックウ(茅空)〟
埋められていた場所は複数の墓がある〝集団墓〟、カックウは亡くなった人と共に埋められていたようです。そして、すぐ近くにはストーンサークル。
頭の一部と両腕は失われていて、調査の結果、それらは埋められる前に壊さていたことがわかりました。
優美な装飾文様に、磨き上げられた光沢、顔にはウルシと思われる跡が残っています。
精緻な作りの大型土偶、
その一部が敢えて壊されていたのは、〝病んでいる部分を壊し、その失った部分の治癒や再生を願った〟という全国各地で見られる人間の身代わり説があてはまるのかもしれません。
そしてカックウが見つかったのは〝集団墓〟。
国宝土偶の中には墓と思われる場所から見つかったものもありますが、それはそのムラのシャーマンなどの特別な人の墓と考えられています。
各地で見られる土偶の殆どは、居住域の直ぐ傍の住居跡や広場の中央または貝塚などから、役目を終えた土器などと一緒にあの世に送られたと考えられています。
ところが、北海道の土偶たちの多くは墓から見つかっているのです。カックウが墓から見つかったのは特別なことではないようです。
墓から見つかる…カックウをはじめ北海道の土偶たちは、死者の副葬品であったのでしょうか。
本州と同じ土偶という文化がありながら、北の大地では〝その意味が違っていた〟のかもしれません。
仏さまを思わせるような慈愛に満ちた表情、その意味に違いがあったとしても人々の心の拠り所であったに違いない…と感じます。
さらに、
カックウには大きな不思議があります。
それはまっくうの存在です。
函館から約800㎞離れた東京都町田市から見つかった「中空土偶頭部」。
愛称・まっくうは、カックウと目鼻口と顔立ちがそっくり!頭の2つの円筒上の装飾も、カックウの頭上に同じような痕跡が見られるのです。
作られた時期もほぼ同じと考えられ、
カックウの兄弟だと囁かれているまっくう。
兄と弟?
土偶の多くは〝女性〟を象っていると言われていますが、カックウは女性とも男性とも区別がつかないと言われているのです。
どちらが兄か弟か?分かりませんが、
土偶の造形は私たちが想像する以上に遠くへと伝播されていた…これには驚かずにはいられません。
さて北海道博物館では、ご当地ならではのイルカやクジラ、オットセイにトドといった海獣の骨なども多く見られ、北海道らしさを感じる一面も。
企画展の「イカ形土製品」
イカを神に捧げて豊漁を祈った…とか!?
海獣を仕留めるための道具や、
貝や魚を捕るための籠を模したよう土器なども。
文化がゆっくりと、かつ確実に広がった縄文時代、
その安定した時代が終わりを告げ、弥生時代が到来します。
ところが、
北海道には弥生時代はありません。
鉄製品の利用や弥生土器などはもたらされましたが〝水田稲作は行われず〟、狩猟・採集といった縄文時代の流れを汲んだ続縄文時代が続いたのです。
続縄文時代の次は擦文時代、そしてアイヌ文化へと独自の歩みを進めていきます。
またその間には、極寒の北の大陸から文化が伝わり、
一部地域ではオホーツク文化やトビ二タイ文化がおこります。
縄文時代は北の最果てであった北海道は、
その後の時代には、南からも北からも文化が伝わる〝文化の交差点〟となり、独自の文化を咲かせたのです。
あまりにも興味深い縄文とそれに続く多様な文化!
ですが…今回は初めての北海道縄文旅。
あまり欲張らずに、翌日は当初の予定通り縄文遺跡へと向かいます。
参考図書
世界遺産になった縄文遺跡 岡田康博 編 同成社
土偶のリアル 權田亜紀子 山川出版社
最後までお読みくださり有難うございました。
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