【翻訳】 Swann Arlaudによる演説: パリでの極右反対デモにて
こちらの記事は、2024年7月3日にパリで行われた極右反対デモでのSwann Arlaudによる演説内容の翻訳記事になります。
Swann Arlaudは、最近では『Anatomy of a Fall』に出演されたフランス人俳優で、パレスチナ支持を表明する急進的かつ熱心な左派かつ、フェミニスト、環境保護の立場を貫いている人物でもあります。
近年ヨーロッパでは極右化傾向が激しく、現在のフランス総選挙でも極右政党である国民連合(Rassemblement National:RN)と新人民戦線(Nouveau Front Populaire / New Popular Front)のせめぎ合いが続いています。
アーカイブはこちらのYouTubeにてご覧いただけます(Swann Arlaudの演説は4:17:20ごろから)。
なお、筆者のフランス語知識は学部での第二外国語+αの程度であるため、もしも誤訳やミスリードな表現等ありましたら、ぜひとも指摘していただけると嬉しいです。
[以下本文] ※ 〔〕内は筆者による注記
左派を一方的に悪魔化した者たちの責任は大きい。彼らは、極右の言説、人種差別、ゼノフォビアを野放しにした人々と同じだ。何年もの間、彼らはあらゆる場所で、あらゆる機会にそうしてきた。なぜ彼らはこんなことをするのか?彼らは、左派ではなく極右と共に政権を握りたいからだ。彼らは、国民連合(RN)が資本主義の敵ではないと知っていて、自分達の既得権益を守りたいからだ。彼らは、何も変えたくないからだ。彼らもまた、外国人を嫌悪し、法と秩序に執着しているからだ。彼らは、地球のことなどどうでもいいと思っているからだ。
(観衆): 反資本主義万歳!(Anti-capitaliste!)
そして騙されてはいけない。RNの取り繕った言説の背後には、他者への嫌悪、女性の権利に対する軽蔑、権力者を保護する姿勢が隠されている。そして、権力者はこのことを知っている。彼らは、RNが決して自分達の特権を脅かすことがないことを知っている。彼らは、RNが決して産業による破壊を止めることはせず、私腹を肥やし続けることができると知っている。彼らは、歴代政権から何十年も忘れ去られてきたために希望を託している弱者や、持たざる者たちをRNが標的にすることを知っている。
右派と左派はどちらも両極端に見なされ続けてきた。このようなことを常に耳にする。「自分は中立だ」、「自分は過激派ではない」。しかし実際には、「極右」がいて、その一方に「左派」がいるだけだ。左派全体だ!共和左派(la gauche républicaine)だ!国務院(Conseil d'État)でさえもそう言っている。だからこそ、彼らは歯をむき出しにした悪魔のように恐怖を煽り立てる。そして、「イスラム左翼」、「フェミナチ」、「エコテロリスト」などと騒ぎ立てる。しかし、実際のマニフェストを見ればわかる。どこに悪魔がいるか。
新人民戦線(Nouveau Front Populaire)は、シンプルな公約を掲げている。法定最低賃金の引き上げ。連帯富裕税の再導入。賃金のインフレスライド制の導入。年金改革の撤廃。病院の再建。2050年までのカーボンニュートラルの達成。学校や病院の職員数増加。この150の詳細な公約と、その支出試算を提示している。では、RNは何を提示した?
(観衆):何も!
RNが提示したこともある。ただそれは、出生地主義(jus soli)を廃止し、福祉へのアクセスをより難しくし、家族合流(family reunification)の権利を規制し、二重国籍者が特定の職に就くことを禁止することだ。そして、彼らは治安部隊〔による暴力〕を正当防衛とみなしている!
そして知っての通り、私たちの社会はもうすでにそうなっている。あらゆる形での抗議活動が、犯罪とみなされている。平和的な環境活動家が、対テロ警察によって朝6時に自宅から追い出されている。そして今日、パレスチナ人に対する虐殺を非難することが、反ユダヤ主義とみなされている。自分達の権利と自由、全ての人々の連帯、平等、解放のための戦い、その全てが、「暴力的」で「危険」だとされている。彼らは物事の役割(rôle)を反転させた。彼らは言語を破壊した。彼らは言葉の意味を捻じ曲げてしまった。
私たちが今日ここにいるのは、明日がさらに悪いものにならないことを願っているからだ!
[本文終わり]
極右化が進んでいるのはヨーロッパに限りません。日本も例外ではなく、そんな状況下で左派を侮蔑し、悪魔化し、その主張から目を背けさせる極右の言説と政治的態度には積極的に立ち向かっていかなければならないのです。