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実践的ジョブ理論① 〜ジョブ理論を実践する手順とテンプレート〜

こんにちは、外資系IT企業でプロダクトマネージャーをしています、ハヤカワ(@kzkHykw1991) です。

先日書いたジョブ理論のnoteが非常に好評で、多くの方に読んでいただき、note編集部にも選んでいただきました!🎉

このnoteで私が伝えたかったジョブ理論の素晴らしさが少しでも多くの方に伝わったことが嬉しかったです!

そこで今回は、ジョブ理論を実業務で実践していただくための、より実践的なアプローチと、最後に「ジョブ理論テンプレート」を配布したいと思います!

ぜひご参考にしていただいて「誰かが本当に欲しいものを、誰もが見つけられる」ようになることを願っています。

まずは、スライドにまとめたので3分で読みたい方はスライドをご覧ください。

それでは解説していきます!


0. ジョブ理論とは?

ジョブ理論を実践する

ぜひあらためてジョブ理論の話をしよう」のnoteを事前に読んでいただきたいのですが、読む時間がない方に「ジョブ理論とは?」を1分で説明します。

ジョブ理論とは「顧客が本当に欲しいと思っているものが何かを見つけるための考え方」です。そのために「顧客はプロダクトを買うのではなく、ジョブを成すためにプロダクトを雇っている」という考え方をします。これを、Jobs to be done (成すべきジョブ), JTBD, ジョブ理論と言います。つまり、「顧客がどんなジョブを成すために、プロダクトを買っているのか?」をユーザーインタビューを通して見つけることで、自社のプロダクトが目指すべき方向性が見えるという考え方です。

です。これは、一般的なプロダクト・ライフサイクルにおける、最初のステップ「事業機会の評価」と「ソリューションデザイン」のステップにフォーカスしたお話になります。

ジョブ理論を実践する (1)

この最初のステップは2つの領域に分けて考えることが出来ます。

ジョブ理論を実践する (2)

このように「問題領域」と「ソリューション領域」に分けて考えます。ジョブ理論はあくまでもこの中の「問題を特定するため考え方」であることに注意してください。決してソリューションを考える方法や、プロダクトを考える方法ではないということです。

1. ジョブ理論を使ってプロダクトを作るまでのステップ🏃‍♂️

前置きが長くなりましたが、みなさんのビジネスにおいて、顧客が実際に抱えているジョブを特定する方法を、ジョブ理論を通して見つけていきましょう。

さて、ジョブ理論の考え方自体は、本を読んだり、いろんな人の話を聞いて分かった!という方も多いと思います。しかし、いざ実際の業務や自分たちのプロダクトで見てみると、何をすべきか分からないという方も多いと思います。

実際に、ジョブ理論を実践するにはこのようなステップが必要です。

ジョブ理論を実践する (16)

前提として、ジョブ理論は、既存製品の価値を改めて見直す使い方と、新たな製品の見定めるための、両方に使うことができます。特に、既存製品のほうがやりやすいです。が、顧客が行動を起こしていない、いわゆる「無消費」を深ぼるためにも使えると思っています。

そのため、必ずアイデアから始めるとは限りませんが、スタートアップや新規事業を立ち上げる時には、やはりアイデアを思いついたり、この領域を変えたい!という想いから始まることが多いと思います。そして、頭の中に電球がたくさん光ったような感覚の中で、ノートやnotionでアイデアや閃きをバーっと書き溜めて、ある意味、半分興奮状態になります。

で、早速figmaやsketch, iPadのイラストアプリで、ワイヤーフレームやUIイメージ、プロトタイプを作ったりすると思います・・・ただ、これには落とし穴があります。

アイデアからすぐにソリューションの見た目をイメージしていませんか?

やるな!とは言いませんが、良いプロダクトは見た目からできるものではありません。本質的な価値や、解決すべき課題を曖昧にして、ソリューションや画面イメージを書いても、後々そんなニーズが無いことがわかり、途方に暮れます。見た目の先入観や直感に引っ張られて、問題を定義してしまいます。

本来、問題とソリューションは分けて考えるべきです。問題はソリューションとは独立して存在すべきです。それが、アイデアを思いついたときは、どうしても目で見てわかるソリューションとセットで考えてしまいます。これが後々落とし穴になります。

ある程度、慣れている人はまずリーンキャンバスを使って・・・と進めると思いますが、リーンキャンバスはアイデアを発散させるものではなく、ビジネス上留意すべき点を整理する、収束させる仕組みです。

ジョブ理論を実践する (4)

そこで、ジョブ理論を使って、頭に思いついたアイデアや閃きを客観的に整理して、仮説を立てて発散させつつ、ユーザーインタビューを通して、発散・収束させて、顧客が本当に欲しい物「ジョブ」を見極めることが重要になります。

2. ジョブ理論の仮説を作る📄

さて、ジョブ理論を使う、といっても何から始めれば良いのか?まずは、フレームワークに沿って、アイデアを発散させましょう。

ジョブ理論を実践する (18)

ジョブ理論では大きく2つの記述方法があります。

①ストーリー (Job Story Statement)
「ランニングをする時に(When)、気持ちを上げてモチベーションを高めたい(I want to)ので、聴きたい順番ですぐに聴けるようになる(So I can)」
When____, I want to____, so I can_____ の構文でSituation(状況), 動機(Motivation), 期待される成果(Expected Outcome)を書く

②アウトカム (Desired Outcome Statement)
「ランニングをする時に(Context)、聴きたい順番で曲を再生する(Object)までの時間(Metric)を最小化(Direction)する」
Direction(方向), Metric(指標), Object of Control(対象), Context(背景)で書く

どちらでも良いのですが、私はまずはストーリーベースで書くことが多いです。

お題は「プロダクト作り」にしましょう。まずは、構文に合わせて、仮説を洗い出していきます。

①JTBDの仮説を作る

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書き方のポイントとして、

・I want to: (Motivation)は人がなぜ行動をするのか?の要因やインセンティブなどの感情的なものが多く当てはまります。
So I can: (Expected Outcome)は、何をしたいのか?どうなりたいのか?という手段や結果、行動を指します。

次に、思いついたジョブをさらに深ぼっていきます。

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So I can(期待する成果)に対してなぜ?と問いかけた時の答えが、I want to(動機)に繋がるはずです。
I want to(動機)に対してなぜ?を問うと、その上位概念のジョブを見つけることができます。

たとえば、
「素晴らしい製品を作りたい」→Why so?
→「顧客に多くの価値を届けたいから」→Why so?
→「ビジネスを成功させたいから」→Why so?
→「独立してもっと稼ぎたいから/人生の目標だから/自分で事業立ち上げを経験したいから/云々...」

といった形で、なぜ?を3〜5回繰り返すと、より本質的なジョブを見つけられます。

また、When (状況)も重要です。マクロとミクロでそれぞれ深ぼっていくことができます。

・マクロになればなるほど、汎用的で多くの人に当てはまるので、大きなプロダクトビジョンを考える際は有効ですが、ストーリー性が弱くなるので、共感度合いが減ります。
・ミクロになれば、具体的になり、より共感できるようになるので、インタビューなどでは使いやすくなります。

思いついたジョブの仮説をこのような形でスプレッドシートにまとめます。

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※スプレッドシートのテンプレートは最後に共有

注意するのは、これはあくまでも「JTBDの仮説」です。ジョブは必ずユーザーインタビューや顧客の声を通して作られるので、これはそのための下準備であることを忘れないでください。

②JTBDの仮説をゴールの種類で分類する

ジョブ理論を実践する (10)

ジョブには大きく3つの機能・感情・社会的ジョブに分けられます。感情的・社会的なジョブのほうが、顧客を強く惹きつけることが出来ます。

またジョブには顧客が望んでいる進捗を経た結果のゴールがあります。そのゴールを19の種類に分類することができます。(参考)

③ジョブパフォーマーを考える

さて、JTBDの仮説をいくつか書き上げたら、それらをジョブパフォーマー、つまりそのジョブを実際に抱えている人物ごとにまとめあげます。このジョブパフォーマーという考え方もジョブ理論のおもしろいポイントの一つです。

ジョブ理論を実践する (7)

これは、従来のペルソナアプローチとは異なります。従来のペルソナアプローチでは、想定するターゲットユーザーを架空の人物として詳細に作り上げます。しかし、実際にソリューションを考えると、特定の人物にしか当てはまらなかったり、汎用的な結果になってしまったり、また大量のペルソナを作ってしまい、ソリューションが固まらないということもよくあります。

しかし、ジョブ理論では、特定の人物像を作り上げるのではなく、ジョブを持っている人物を一つのジョブパフォーマーとして総称することができます。それは、役職でも雇用形態でも業務内容でも業種業界でも何でも良いのですが、いずれにせよ共通のジョブを持っている人の集合体をジョブパフォーマーとして定義します。

今回の例でも、わかりやすくラベル付け「プロダクトを持たないスタートアップ創業者」や、その人物像をわかりやすく書いていますが、あくまでもチーム内で共通認識を得るための説明にすぎません。

④バリアを考える

次に、必要な要素がバリア、障壁です。

ジョブ理論を実践する (8)

バリアがなければ人間は行動をすでに取っており、その進捗を達成しているはずなので、現状でバリアがないのであればその進捗の仮説自体が間違っていると考えることができます。あらゆるジョブがこのようなバリアがあるがゆえに、達成できていないのではないでしょうか?

⑤代替手段を考える

最後に考えるのが代替手段です。ユーザーが何かしらの代替手段を使ってそのジョブを達成しようとしているのであれば、そこに何かしらの進捗に対する欲求が存在すると言うことができるという考え方です。

ジョブ理論を実践する (9)

たとえば、「文鎮というソリューションがないから、近くにあった似たような重さのバナナを代替として使う」とか。「結婚式の席次表を作るツールがないので、エクセルで頑張って作る」とか、です。

一方で、この代替手段は、ユーザーのジョブを「100%達成しているわけではない」というのもポイントです。たとえば、「バナナが段々傷んできて、少し汁っけが出て半紙が濡れてしまう」とか、「エクセルで席次表を作るのはめちゃくちゃめんどくさいし、共有もしづらい」とか。

このような代替手段でユーザーが満足できていない状態を、Struggle (課題や困難な状況に対して、もがいたり、取り組んだり、悪戦苦闘してる様子)と言います。このStruggleを特定することも重要です。

ジョブ理論では「ジョブは必ずユーザーインタビューを通して生まれる」と言いましたが、つまりユーザーが実際に行った行動や過去の経験、発言などの事実を重んじます。実際にユーザーが行っている代替手段や抱いているStruggleの事実が聞ければ、ジョブが存在することをより強く証明することができるというわけです。

ジョブ仮説リストの完成!🎉

ここまでの内容を整理すると・・・・

ジョブ理論を実践する (11)

これでジョブの仮説のリストが完成します!🎉 といっても、これはあくまでも最初の1歩です。

ジョブ理論を実践する (12)

このあと、ここで作ったジョブの仮説を元にユーザーインタビューを行い、その仮説が正しいかどうかを検証し、さらに思いつかなかったようなジョブを発見して、ジョブのリストを日々アップデートしていきます。

このジョブリストを作る作業を定期的に繰り返して、開発プロセスに組み込むことで、機能開発やロードマップを考えるときも役立ちます。

ユーザーインタビューについてはまた別のnoteでまとめたいと思います。

最後に、実践的ジョブ理論のフレームワークを配布

ここまでの内容をキレイに整理することができるテンプレートファイルを用意しました!

ジョブ理論を実践する (15)

⚙️実践的ジョブ理論のテンプレートファイルの構成

1. ジョブ理論用語集: ジョブ理論でよく使う用語の説明
2. ゴール種別:ジョブにおける顧客が求めている進捗、ニーズ
3. バリア種別:ジョブにおける制約、壁、バリアの種類。
4. JTBDテンプレート: JTBDを整理するためのテンプレート
5. ユーザーインタビューシート: JTBDをもとにユーザーインタビューをするときのシート
6. GTA分析シート: インタビュー結果を分析するためのシート
7. カタリスト種別: ユーザーが行動をするきっかけの種類

今回の紹介した内容以外にも、ジョブ理論で使う用語集や、ジョブの例文集、テンプレート、ジョブの自動分類、ユーザーインタビューシートなどを一つのファイルにまとめているので、実践的ジョブ理論の内容を体系的に整理することができます。

追記) 実践的ジョブ理論 ユーザーインタビュー手法の内容もシートにアップデートしました!こちらの記事を見ていただき、ジョブ理論におけるユーザーインタビュー手法についても参考にしてください!

ぜひ自社やチームでご活用ください!

使っていただいた方の声👏

クライアントと一緒にジョブを整理して共通認識が作れるようになりそう by 宮川耕 さん

ジョブ理論を実践するための各種テンプレートが用意されており、ゴールタイプやバリアタイプが定義されてすぐ使えるなど立ち上がりが早く使える by じゃいP さん

スプレットシートがシステマチックになっていることで、ジョブ理論実践がスムーズにできた。
記載方法のテンプレートがあり、記載方法で悩むが時間が少なかった。 by tomoyan(三好智也) さん

機能開発の方向性を勘ではなく、実際の顧客とそのジョブに焦点を当てられるようになりました。
また自社の製品はそもそも何のジョブを解決するためにあるのかを言語化することで、頭の整理にもなりました。 by 藤島 誓也 さん

ジョブの定義の仕方がよくわかった点。特に、バリアや代替手段のところ。 by sassy さん

フォーマットが決まっているため、漏れなくジョブ全体を記載できる点、一行で一つのジョブを表すことができるので決まったフォーマットに沿って一行でジョブを定義できるため、抜け漏れのないジョブを数多く出すことができる。その結果、複数人での議論や深堀りとまとめ上げがしやすい! by Kohei Fukada さん

今まで漠然と進んでいたプロダクト開発が、フレームワークを使用することで、劇的に論理的になりました。なぜ作っているのか、何のジョブを達成するのか、という根本的な部分から時間をかけて考えることで、開発のブレが解消されました。 by 宗座 さん

みなさま、ありがたいフィードバックありがとうございます!!🙇

おわりに

この記事が良かったと思う方は、Twitterのフォロー、noteのスキ、そして「実践ジョブ理論フレームワーク」のダウンロードをおねがいします!

ダウンロードしていただいた方にはお礼もこめて、直接オンラインで使い方の説明やご相談などもお受けできればと思います!ご購入いただいたらTwitter DM等でご一報くださいませ!

追記:2021/12/31
今年1年間このnoteを販売させていただいて、多くの方にダウンロードいただきました。もっと多くの方にお使いいただくために、価格を値下げして販売したいと思います!

¥1500 → ¥980

追記: 2023/03/15

Generative AIを使って、アイデアから仮説を生成するサービス「Value Discovery」をリリースしました!
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