血友病について 特別支援の観点から
血友病の仕組み
血友病とは、血液が固まるのに必要な蛋白が不足している為、出血したときに,血が止まりにくくなる病気のこと。放置すると長時間、出血が続くことになる。その血を止めるには、血液凝固因子が必要である。ただし,不足している凝固因子を補充すれば出血は普通に止めることができる。血液凝固因子はタンパク質の一つ。12種類からなり、それぞれ番号がつけられています。その12種が次々と反応し、フィブリンという糊を作り、出血を止めようとする。しかし、血友病の場合、そのうちの一部が遺伝的に不足しているため反応が途切れ、出血が止まりにくくなります。そのうち,第8因子が少ないタイプを血友病A,第9因子が少ないタイプを血友病Bという。
血友病の治療
血友病の治療は、不足している血液凝固因子を製剤によって補充する補充療法がなされている。不足している因子を人為的に足してあげることで、止血効果が生まれる。出血時に注射するだけでなく、運動会などのように出血が予想される時に事前に注射する予備的補充療法、更に将来の血友病性関節症を避けるために数 日毎の一定間隔で注射をする定期補充療法といった治療法も行われている。また、正常な凝固因子が欠乏している血友病の患者の場合、凝固因子を補充すると,それを異物と見なして,その凝固因子に対する抗体を作ってしまうことがある。この抗体の中には、補充した凝固因子の働きを妨害するものがあり、このような抗体のことをインヒビターという。インヒビターができてしまうと、凝固因子を注射しても効かなくなる(血が止まりにくくなる)ことがあり,別の治療方法が必要となる(中和療法・バイパス療法・血漿交換吸着療法・免疫寛容療法など)。
血友病への配慮
血友病は血が止まりにくい病気であり、出血しやすい病気ではない。健常な人とほとんど変わらない生活を送ることができる。つまり,学校の授業や活動には原則として制限はない。可能な限り積極的に参加させてあげることが大切。しかし,出血を生じている場合は安静が必要ですので、教室の移動時などにできるだけ配慮する必要がある。また、危険性から考えて、頭部打撲による頭蓋内出血には気をつけなければいけない。転倒、転落や激突後にぼんやりしているなど、頭痛や吐き気を訴えたら要注意。保護者やかかりつけの医師に相談すること。
血友病をもつ子どもは、幼児期に保護者の言いつけをきかないで出血してしまい、痛い思いをした子どもが多いことからおとなしくて良い子が多く、自発的に行動しない、消極的な子どもとみられる例が多い。出血がほとんどない軽症の場合は、逆に保護者も本人も病気のことを無視したいという気持ちから無茶をしがちで、教室でも目立って元気な子どももいる。普段は積極的でいいのだが、時として大きな出血を起こしてしまうことがあるので、注意は欠かせない。
血友病は,遺伝が関係ある病気である。そのため、保護者や家族の中には、近親者や近所の人に,子どもが血友病患者であることを知られたくないと考える人もいる。また、遺伝性疾患であることから、母親が自分の責任だと感じて自分を責めて悩むこともある。だから、学校の先生には病気のことを十分に理解してほしいと思う一方で、クラスの子どもたちには話してほしくないと思う家族も多くいるということを注意しておかなければならない。